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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)1

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南部が振り向くと相原がエレベーターから降りてきた。

  「大丈夫か?」(南部)
  「うん、大丈夫。」(相原)
  「無理するなよ?」(南部)
  「大丈夫…いろいろ考えたんだ…」(相原)
  「何を?」(南部)
  「最初に会った時からの事…よく考えたら今年出会って10年目でさ……」

相原が当時を思い出しながら話していた。

  「途中から古代くんが合流してきて…いつも5人で楽しかった…よく考え
   たらあの優秀な人達に付いていけて僕ってすごかった、って思っちゃった。
   もし別の所に配属になっていたらヤマトに乗りこめているかわからないし。
   もしも…ヤマトの後に作られた戦艦に配属になっていたらそれこそ処女航海で
   一緒に大破してたかもしれないし…」

相原は先日まで一緒に並んで仕事をしていた人が戦艦に配属になって還らぬ人となった事が何度もある。

  「今は勉強なんてしたくない、って思うけどあの頃は勉強が楽しかった…
   自分たちに課せられた未来の事なんか何も考えずただ目の前にあるものを
   処理して行くだけの事だったけど…島くん、古代くん、加藤くんに山本くん
   この4人が一緒だったからそうだったんだ、って思えるんだ。」

相原は力強く言った。

  「僕は…晶子さんに再会するために前の戦いは必死だった…さっきまでの
   僕はその事、全く頭に入れてなかった…アクエリアスを止める事だけしか
   考えてなくて…だけどそれじゃダメで…アクエリアスを止める事が仕事じゃ
   ない、って思い出したんだ。僕らは地球を護って初めて働きが評価される
   んじゃないかって事を…。島くんが守り抜いたヤマトで地球を護らないと
   僕らの未来はない…気持ちの整理もした。もう、大丈夫…。」

相原はいつもの顔に戻っていた。

  「ちょっと太田くんの様子を見てきます。」

相原はそう言うと席を立って太田に近いエレベーターから第二艦橋に向かった。

  「相原も大人になったなぁ…」

南部は大きく伸びをして立ち上がると

  「父親が再建に貢献したヤマト…隅から隅まで見てこようかな…。」

そう言って南部は相原の席に近いエレベーターで下に降りた。











  「アクエリアス、地球に最接近するまで後5時間です!急いでください!」

ヤマトが大きく揺れる…太田の言葉の通り、太陽系中心方面に近付くにつれ磁場と星の引力の関係で海がかなり荒れてきた。そのせいでトリチウムの積み込みに時間がかかっていた。

空いているスペースと居住空間全てにトリチウムを含む海水を積み込むので艦の安定が難しい。真田はアナライザーにヤマトの傾きを直で読み込めるソフトを読み込ませた。


準備は整った…後は地球とアクエリアスの間で水柱を断ち切ればすべてが終わる………が、進は複雑な心境でこの太田の声を聞いていた。


  (トリチウムを積んだら…ヤマトと共に沖田艦長の命は…せっかく取り留めた
   命なのに…再会して…もっと話したかったのに…何も叶わず全てが終わって
   しまう…)

進は自室の整理が終わると艦長室に足を向けた。





  「古代です、入ります。」