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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)1

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  「どうした?古代。」

沖田は静かに口を開いた。進はさっきまで思っていた事、聞こうとしていた事が口から出てこない。

  「心の整理が出来ないのだろう?」

沖田は静かに進に語りかける。

  「お前と島がヤマトの運命を変えた…あの通信カプセルがなければヤマトは
   飛び立てば一生地球に戻ってこない箱舟として再建されたものだった。
   言うなれば…ヤマトは恩人を亡くしてしまったのだな。」

沖田は小さなため息をついた。

  「通信カプセルを見てワシは藤堂にこう言った。“最後の宇宙船を私に
   くれ”とね。第一艦橋のクルーは全員乗り込む予定で特別訓練をしていた。
   万が一ヤマトが故障をしても最低でもこのメンバーがいれば生き残れる
   ように、と生きるために最低限のパートナーと力を合わせて全ての事を
   協力して出来るよう、訓練をしていた。」

進は変な訓練だな、と思っていた事を思いだした。自分に課せられた訓練だけじゃ物足りなくて島の訓練と変えていた事を…。

  「普通、自分の訓練だけで満足するのに古代と島…加藤と山本、南部と太田は
   それぞれお互いの訓練を工夫して与えられているもの以上の訓練をした。
   だからメインクルーとしてふさわしいと判断した。ユキは真田くんの推薦
   だった。箱舟計画の時、ユキは看護士として乗り込む予定だったが真田くん
   が随分前からレーダーの仕事を覚えさせている、という事でメインクルーに
   したんだ。真田くんはヤマトの再建計画に当初から参加していた。もちろん
   箱舟計画と知ったうえでね…。」(沖田)
  「真田さんが?」(進)
  「そうだ…だが真田くんはガンコで……再建計画に参加してもいいが乗る
   事は完全拒否だった。真田くんは決して地球から出ないスタンスをずっと
   貫いていた…月の事故以来真田くんは地球を出ていないんだ。」(沖田)
  「そうだったんですか?でも真田さんは技術班の班長として乗り込みまし
   たが?……ユキが説得したんですか?」(進)
  「いや、箱舟計画からイスカンダルへ行くのに変更した時に乗り込む事に
   したらしい。生きて帰れるかわからない賭けのような旅に真田くんは賭け
   たんだ。ユキは乗り組み自体は拒否しなかったが生活班の班長を引き受け
   たがらなかったのを真田くんが“一緒に乗り込むから”と引き受けさせた。
   ユキは正規の軍の人間じゃないからな…その辺りを気にしていたんだろう。
   真田くんの報告には訓練生と遜色ないとあったがね…。まぁ月基地で
   艦載機をすぐに乗りこなした、とは聞いていたから大丈夫だろうと思って
   いたけど…これほどまでに活躍してくれるとは思わなかった。第一艦橋でも
   ユキが一人いる事で随分空気が柔らかかっただろう?男ばかりの第一艦橋…
   気心知れているとはいえ長い航海でいざこざがないわけではない…そこに
   女性が入る事でその場の空気を和らげることができると思ったんだがそれ
   には自分の仕事を責任もってしっかり出来る女性であり人の意見に左右
   されるような弱い女性じゃいかん。だけど融通の利かない女性も使えない…
   ユキは自立していて責任感があって看護士をしていたせいか気が利く…。
   自分の意見をしっかり持っているが相手の気持ちや意見も聞ける。だから
   藤堂の秘書が務まるのだろうと思うが…本当にユキを乗せてよかったと
   何度も思った。」

沖田は満足そうにソファーに深く座った。

  「ワシは一度だけユキの夢を見た事がある。」(沖田)
  「夢?ですか?」(進)
  「ユキが透明の何かに包まれて赤ん坊のように丸くなって宙に浮いていた。
   ワシが近付くとユキは気付くんじゃがその透明な何か、からでられなくて…
   出られないと思うとユキはまた赤ん坊のように丸くなってしまってな…
   今思うと仮死状態で“生きている”事を伝えたかったのかもしれん。」

沖田の言葉にユキが普段丸く縮こまって眠る事を思いだした。





と、そこへ艦内放送で“トリチウム積載完了!”と報告があった。