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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)2

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<ワープ明け>
  「ワープ終了。」

ヤマトは無事、月と地球の間にワープ明けした。航海の後地球が見えると“帰って来た!”と安堵したものだが今日は地球の青さが悲しく見える……

  「森ユキ、医務室へ向かいます。艦長、先に負傷者の搬送、その後戦死者の
   搬送を行います。」

ユキの報告を受けて沖田は頷いた。

  「ユキ…速やかに…頼む。それと各乗組員は滞る事のないよう順次連絡艇に
   乗り冬月へ移動するように。」

全員が敬礼すると沖田は艦長室へ向かった。

  「南部、戦闘班及びコスモタイガーチームを頼む。」

進が声を掛けると視界に冬月が見えた。

  「……了解しました。」

南部の敬礼が震えている。

  「太田、航海班を頼むな。」(進)
  「了解です。」

太田も敬礼が震えていた。

  「二人とも…長い事ありがとう。ヤマトでなければ南部は戦闘班を率いて
   太田は操縦かんを握って当然の人材だ…南部がヤマトにいてくれるから
   俺は安心してゼロに乗って飛べた。本当にありがとう。」

進が二人の前で頭を下げる。

  「古代…これが最後じゃないんだ…そんなこと言うなよ。」

南部は涙をいっぱいためていたが笑顔で言った。だけど南部はわかっている。もう進と一緒に飛ぶ事はない、と。同じ艦隊や護衛で仕事を一緒にすることはあっても同じ戦艦で一緒に戦う事はないだろう、と…。南部にとって進の背中は大きく常に追うべき存在だった。

  (決して敵う相手じゃない…最初見た時から感じていた。だったら古代が
   自由に戦えるよう、補佐するしかない…それが俺を活かす道)

南部はそう思って戦っていた。何度も死線を潜り抜け一緒に戦ってきた。すぐに飛び出して行く進と一緒に行きたい気持ちを抑え常にヤマトを守り抜いた…

  「南部、本当はさ…お前と一緒に行きたかったんだ。」

進がポロっと本音を言った。

  「お前のコスモガンの的中率、マジですげぇって思ってた。」

南部は反射衛星砲を爆破しに行った時の事だと思った。

  「人選した時…万が一の事を考えたら…俺がいなくなって南部までいなく
   なったらヤマトはどうなる?って思って連れて行けなかった。」(進)
  「わかってた。」

南部が静かに言う。

  「古代がいつもそう思ってた事…知ってる。だけどさ、いつも思ってた。
   “俺は古代の代わりはできない”ってね。飛び出して行って無事に帰って
   くると本当にホッとしたもんさ。そのホッとした時“俺は古代のカミさん
   じゃねぇ”って思うんだよ。」

ニカっと笑った南部の眼から涙がこぼれた。

  「ヤマトに乗れて本当によかった。古代、ありがとうな。」

南部が進の手を握った。

  「古代くん…」(太田)
  「太田…」(進)

太田はボロボロ涙を流していた。

  「こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど…楽しかったんだ。ヤマトに
   乗って…古代くんと島くんのくだらないケンカや見たり相原とヤマトを
   走り回ってくだらない情報集めたり…任務のない時バカばっかしてたけど
   みんなといると安心できた。他の戦艦じゃこんなことできないから……
   みんなが家族みたいで…。」

進が太田の肩を叩く。

  「太田とは一緒に飛ぶ機会があると思う。その時は頼むな…」

太田が泣きながら進の手を掴む。

  「古代くん…」

そこへ相原がやってきた。

  「相原…これ。」

進が島の羅針盤を相原に渡した。相原はそれを受け取ると涙が溢れてきた。

  「島くん…島くん…!」

相原はそのまま泣き崩れた。

  「島は今、テレサさんと一緒にいるらしい。」

進の言葉に三人がハッとした。

  「ユキが…倒れた時…テレサさんと話をしたらしい。青白い閃光が見えた
   後、テレサさんが話しかけてきた、って…。相原、島は今幸せなんだ。
   笑顔で送ってやらないと…な?」

進の眼に涙はなかった。







  <こちら森。負傷者及び戦死者の輸送完了。生活班より順次、移動するよう
   予定通りお願いします。>

ユキが一般の乗組員を誘導し始めた。相原が進の眼を見た。

  「それじゃ…僕、行きます。最後生活班が誰も残っていないのを確認して
   ユキさんに引き継ぎ先に降ります。冬月で待っています…と、その前に
   艦長に一言お詫びしてから行きますね。」

相原は敬礼して第一艦橋を出て艦長室へ向かった。