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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)2

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 「沖田艦長。」(山崎)
  「機関長…ご苦労だった。」

沖田は山崎を招き入れた。

  「太助はどうですか?」(沖田)
  「あいつですか?なんとか一人前になりましたね。親父さんと比べちゃいけ
   ませんが…親父を追いつけ、追い越せ、で頑張っていますよ。」

沖田は太助を見ていると一緒に働き始めた頃の徳川機関長を思い出していた。

  「ガンコ親父でした。その辺りは艦長もよくご存じだと思いますが…。職人
   気質で…。同じ艦に乗ると安心しましたね。」

山崎がオイルにまみれた手を見て言った。

  「ヤマトの機関室には親父さんの魂があるような気がするんです。地球で
   初めての波動エンジンの運用を成功させた人ですからね。」

沖田は静かに右手を出した。

  「ありがとう、山崎機関長…プレッシャー、大きかったでしょう。」(沖田)
  「いえ…ヤマトに携わる事が出来て本当によかったと思っています。」

山崎はそう言って沖田の手を握り返す。

  「小さなかわいらしい命を救えなかった…それだけが心残りです。」

沖田はサーシァの事を言っていると思った。デザリアムでの戦死…余りに衝撃的で藤堂から詳しい話を聞いて涙した。

  「だけどきっともうじき沖田艦長にとっても孫のような子が出来るかも知れま
   せんね。戦闘班長と生活班長のお子さん…楽しみですね。島の事は残念です
   が…私達は未来を見て夢を持って生きて行かなくてはいけません。」

山崎の言葉が沖田の心に染み入る。

  「そうですね…古代とユキの子供か…かわいいでしょうね。」

しみじみ沖田が言うと

  「とてもかわいいと思います…それでは私は先に冬月に向かいます。」

山崎は敬礼すると艦長室を出た。





山崎が艦長室を出ると沖田は第一艦橋に降りてきた。ヤマトの回りはコスモタイガーが名残惜しそうに飛んでいる。そして眼下にはヤマトの砲口が見える。

  (最初に見たヤマトはただのスクラップだった…。しかし構造を見て当時の
   戦艦としてすばらしい技術を持って生まれた事を知った。大和は生まれ変
   わり地球の希望となった。すまんな…島。ワシももうすぐそっちへ向かう。
   その時は恨み言、言わんでくれな…。)

沖田はそっと島のシートに触れた。

  (ユキはきっと幸せになるだろう…古代と真田くんがしっかり守ってくれる
   島…向こうに着いたらゆっくり話そう。)





  「全員、退艦完了しました。」

沖田は後ろから進に声を掛けられた。アクエリアスが地球に最接近するまで後1時間と迫っていた。第一艦橋には進とユキ、そして真田が残っていた。

  「古代…ユキ、お前たち二人はヤマトを内部爆破に向け波動砲の回路を
   切り替えろ。」

沖田は静かにそう言うと二人の前に立った。真田はそれを聞いて先に機関室へ向かった。

  「古代…ユキ…いい子を産むんだぞ?お前たちの子供だ…きっとかわいい
   だろうな。ワシにとっちゃ、孫のように思えるわい。」

ユキは沖田の眼を見て“艦長”と言った瞬間、進が一歩前に出た。

  「ただ今より…古代、森、両名、波動砲の回路切り替えに参ります!」

そう敬礼すると沖田は柔らかい笑顔になりそっと二人を自分の懐へ包み込んだ。