島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)2
波動砲口を塞ぐ最後の仕事を終えた進とユキと真田は佐渡とアナライザーと一緒に最後の連絡艇に乗り込んだ。佐渡は一升瓶とお猪口を二つ抱え涙をこらえていた。
「佐渡先生…」(進)
「行こうかのぅ………」
連絡艇は静かに出発してヤマトの艦載機の射出口は閉じられた…連絡艇から見えるヤマトはいつもよりちいさく見えた。
「ヤマト、全乗組員収容終了。冬月は地球へ向かう。」
連絡艇の最終便を冬月の艦長、水口が沖田を出迎えに来ていた…が沖田の姿が見えず4人の顔を見て小さくため息をつくとそう第一艦橋に告げた。水口は4人とアナライザーを乗組員がいる側面展望室に案内し第一艦橋に戻って行った。ヤマトから離れる冬月…コスモタイガーがヤマトの回りを飛んでいる。加藤が沖田を見つけ通信を送るも沖田の決意は変わらなかった…
(とうさん…)
誰もがその瞬間を涙なくしてみれなかった。ヤマトの様子は地球でも一斉に放送され誰もが固唾をのんで見守っていた。
大量の水の一部が地球へ向かうが大きな災害にならないだろう…それどころか二度、蒸発してしまった海に元の海水を呼び戻す事が出来るかもしれない…アクエリアスは地球に再び生命の種を落して行ったのかもしれない…
乗組員は涙を流しながら無言で宇宙空間に浮くアクエリアスの残骸を眺めてた。
進は側面展望室をでてひとり遺体が安置されている部屋にいた……が、そこへ冬月の通信士が進を探しに来た。
「古代戦闘班長、こちらに解析不能のダイレクト送信が入っておりまして…」
進はすぐにデスラーからの入電だと気付いた。
「通信室で話せますか?」
進がそう言うと通信士が通信室へ案内した。進は通信士にユキと真田、南部、太田、相原の5人を通信室に呼ぶよう頼んだ。
「デスラー…。」(進)
「古代…ヤマトは…」(デスラー)
「アクエリアスが最後のワープをした時点で…仕方なかったんだ。」
進の表情は思ったよりすっきりしていた。
<ユキがいないようだね?>(デスラー)
「今、こっちに向かってるよ。メインクルーと一緒に来るよ。…ところで…」
進がガルマンガミラスの本星の事を聞こうとした時デスラーが進の言葉を遮るように話し始めた。
<ルダ女王が…ガルマンガミラスを救ってくれた。>
デスラーの意外な言葉に驚くと
<あれからガルマンガミラスはシャルバートと友好同盟を結んだ。別の銀河が
交錯した時、ルダ女王がガルマンガミラスの住民を受け入れてくれた。>
進が驚いていると
<ヤマトが太陽を制御した後われわれは母星に戻らず銀河系中心の同盟国に
向かった。古代の“戦いからは何も生まれない”と言う言葉を思い出して
同盟国とどう向き合っていくか、を考えた。これからだった…銀河系を
どうまとめて行くか…考え始めた矢先の事だった。>
進はデスラーが改心してくれた事を嬉しく思った。
<ルダが地球が危ないと教えてくれて…異次元空間を飛びあの戦闘空間に
出た、と言うわけだ。間に合って…本当によかった。>(デスラー)
「デスラー…ありがとう。デスラーが来てくれなかったらヤマトはあの場所で
爆発していただろう…。デスラーのおかげで地球は救われた。」
その時ノックの音がしてメインクルーが入ってきた。
<ヤマトの諸君…>(デスラー)
「デスラー、ありがとう。」
真田が礼を言うと全員が頭を下げた。
<いや、礼には及ばん…それより一人足りないようだが…島、と言ったな?
ケガでもしたのか?>
デスラーは名前を憶えていた。
「島は…死んだ。」
進の眼にみるみる涙が溜まるのを見てデスラーは申し訳なさそうに
<そうか…悪い事を…すまん、古代>
デスラーは静かに眼を閉じた。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)2 作家名:kei