島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)2
「デスラー、これからどうするんだ?」(真田)
<これからシャルバートに戻り今後の事を考えようと思う。銀河系中心は
決定的なダメージを受けている。国民には申し訳ないが別の銀河で再建
する事も視野に入れている。ルダ女王の好意にいつまでも甘えているわけに
いかないからな。>(デスラー)
「そうか…」(真田)
<揚羽くんから“頼む”と言われたよ。彼はガルマンガミラスの恩人だ。
彼の魂はルダと共にある。古代、安心しろ。>(デスラー)
「本当か?」(進)
<あぁ…常にルダの横にいる…まるで古代とユキのようにな。ユキ…少し
痩せたね。>(デスラー)
「心配してくれてありがとう。デスラー総統。私は大丈夫よ」
ユキはそう言って笑った。
<そうかね?女性の“大丈夫”は余り“大丈夫”じゃないと聞いた事がある。
無理をしてるのに気付かないから、とね。>(デスラー)
「まぁ…それは誰が言っていたのかしら?デスラー総統にもいい方が現れた、
って事かしら?」
ユキの問いかけにデスラーは笑った。
<いかん、いかん。ユキと話していると何でも話してしまいそうになるな。
さて…私は行くよ。またいつの日か会おう。>
デスラーはそう言うと画面から消えて行った。
「もうすぐ地球だな。」(南部)
食堂の片隅で太田と相原がうなずいた。
「古代とユキさんは島の所か?」(南部)
「うん、離れられないみたい。ユキさんが。」(相原)
「もう、死亡の通知は行ってるんだよな?」(太田)
「あぁ、アクエリアスでトリチウムを積んでる時に報告は済ませた…。今頃
島くんの家族もドッグで待ってるんじゃないかな。」(相原)
亡くなって地球に運ばれる戦死者の家族は他の家族と別のところに呼ばれている。
「多分、古代とユキさんは島さんと一緒に降りるつもりだと思う。」(相原)
相原は島が実家に帰る時は進と一緒に帰っているのを何度も見ている。
「次郎くんも大きくなっただろうな。」
太田はテレサを失った旅の時、島の部屋に時々来ていた次郎を思い出していた。
「俺たちも…そうするか?」(南部)
相原は無言で島の羅針盤を取り出した。
「それ…」(太田)
「島くんの。ユキさんが外してくれたんだ。5つ買ったのに3つは形見に
なっちゃったよ。」
相原は悲しそうに羅針盤を見つめた。
「島…もうすぐ地球だよ。」
棺が並べられた部屋の片隅に進とユキがいた。
「アクエリアスはもう行ってしまった…。地球は救われたぞ。お前が発進
させたヤマトのおかげで…。」
ユキは何も言えず涙を拭いた。
「島…なんとか言えって…島!」
進の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「古代…」
進は後ろから声を掛けられた。相原と南部と太田が立っていた。
「いい顔…してるな。まるで眠っているみたいだ。」
太田は涙を目にいっぱいためてそれでもにっかり笑った。
「そうだね…遠慮しないで起きてもいいのに…島くん、聞こえてる?起きても
いいんだよ。」
相原が話しかけた。
「…女神が離さないだろうなぁ…」
南部がメガネを取って涙を拭いた。
「南部…」(進)
「あの世で幸せにこっち見てるんだろうな、って思うとちょっとくやしいな。
古代、負けずにこっちの幸せを見せつけてやれよ。」
南部がメガネを掛けなおして進に軽く一発ボディーブローを食わせる。
「こっちの方が幸せだぞ、ユキさんの方がきれいだぞ、ってさ。」
進は南部の言葉に島の言葉を思い出した。
(ユキを幸せにしてやれよ…)
南部は進の顔を見た。
「島は…ずっとユキさんの事、好きだったんだ。テレサと別れてから前と
ユキさんを見る眼が変わったってずっと思ってた。それこそイスカンダルへ
向かってる時は古代と同じ眼だったけど…そうだな、好きなんだけどこう、
見守ってる眼…って言うか…古代とは違う眼だった。いつからか…そうだな、
古代とユキさんを見守ってる、って感じだった。古代の事もユキさんの事も
好きだから…って…。飲むとよく二人の話になった。古代の事はケチョン
ケチョンなんだけどユキさんの話になるととにかく心配ばっかり。まるで
親か?って感じだったからな。無償の愛…そんな感じだったのかな…」
南部がもう一度涙を拭いた。ユキは大きな目を見開いて聞いていた。
「古代、島の為にも早く式を挙げろ。その為だったらなんでも協力するから。
沖田艦長にもなにか言われてるだろう?」(南部)
「あ…あぁ…」
進は沖田の言葉を思い出していた。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)2 作家名:kei