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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)2

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  「お前の事だから…波動エネルギーとトリチウムを融合させる、って行った時
   俺はお前が残る、って言うんじゃないかと思った。」

南部がそう言うと進の眼が大きく見開いた。南部はそれを見逃さなかった。

  「お前…バカか?分かってるよな?その意味!!!」

南部が進の首を絞めつける。

  「お前がその仕事をしたら…ユキさんはどうするつもりだったんだ?前に離れ
   離れになって…ユキさんがどんな思いをしたのか…忘れちまったのか?
   お前は…」

太田と相原が南部を押さえつけた。なすがままになっていた進も床に座り込んだ。ユキだけが立ったまま涙を流していた。

  「…違う…違うんだ。」

進が小さな声で言った。静かな部屋に進の小さな声だけが残る。

  「自動操縦で、って思ってた…だけど艦長が自動操縦じゃ失敗の恐れがある、
   って…波動砲を撃つのは戦闘班長の勤め…俺が撃って当然だろう、って
   そう言ったんだ…けど、沖田艦長が艦長として…自分がやる、って……」

ユキは初めて聞くその話にショックを受けていた。島が死んで…もしかしたら進も死んでいたかもしれない……進は自分と生きる事を捨てようとしていた……

  「本当なの?古代くん…」

ユキは涙を拭く事無く4人を見つめている。

  「俺にはまだしなくてはいけなことがあるから、って…。」

進はそう言うとユキを見つめた。

  (ユキを愛して…二人の子供を作る…愛する人と身も心も結びついて幸せに
   する事それが俺のもう一つの戦い…)

ユキは涙を拭いて南部の手を持って立たせると

  「いいの…古代くんはそう言う人だから…きっと波動砲の引き金を引く、って
   事がどんな結果になるのか、まで考えていなかったのよ。」

そう言って真っ赤な目でクスっと笑った。

  「生きて…こうしていられる事に感謝しましょう。沖田艦長が私たちに
   “普通”に生きろっておっしゃってるんじゃないかしら?ヤマトの古代、
   ヤマトの南部ってずっと言われるかもしれないけどヤマトがなくなって
   しばらくたてば人は“そうだったな”って感じで今ほど騒ぎ立てなく
   なるわ。ありがとう、南部くん。私は大丈夫。」

ユキは振り向いて進を立たせると

  「もう…本当に頼りないんだから…大丈夫ですか?戦闘班長?しっかりして
   頂かないと部下は困りますよ?まぁ…ヤマトの存在がなくなってしまった
   時点で私の辞令の効果は切れちゃったからもう、部下じゃないけど。」

進はユキの言葉にそれぞれの辞令の内容を思い出した。勤務内容の後ろに取って付けたような言葉が常にあった事を…

  「私は普通の長官秘書になっちゃったわけで…。」

ユキの場合長官の第一秘書を命ず、の後ろに“ただし宇宙戦艦ヤマトの航海のみレーダーのオペレーター及び生活班班長を任ず。”と言う言葉があった。

  「島くん、この人たちこんな時でもケンカするのよ?困った人たちね。」

ユキは島が笑ったように見えた。










  <<間もなく冬月は着陸態勢に入ります。>>

アナウンスが入った…が、5人はずっと島のそばにいた。軽いショックを感じ着水したのが分かった。

  「島…」(真田)

真田が島の遺体の安置されている部屋に入ってきた…が、そこに5人がいて驚いた。

  「いないなぁ、って思ってたら…ここに全員集合してたのか。島…いい顔
   してるな。俺より先に逝くとは思ってなかった。」

真田が目頭を抑える。

  「お前と古代を見ていると中学生のケンカみたいで面白かったんだがなぁ…
   それが見られなくなるのが一番残念だ。お前が守ったヤマトを守りきれず…
   悪い事をした。だけど地球が救われたのは間違いなく島のおかげだ。
   だがな、死んじまったら何もならないんだ。バカだなぁ…島…」

真田が溢れる涙を抑えきれなかった。

  「島…一緒に降りような。」

真田がそう言うと5人も一緒に頷いた。