島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)3
夕方、ユキの実家に行く用意をしている時、不意に進の携帯が鳴った。相手は島の携帯だった。
(次郎か…)
島の携帯は次郎に譲られた。他のクルーのメモリーはその場で消したがメインクルーの番号はそのままにしていつでも連絡していいぞ、と伝えてあった。
「はい、次郎くん、どうした?」
進が少し高めの声で出た。
<あのぅ…島 次郎です。えっと…あさっての午後1時に兄ちゃんを埋葬
することになったから連絡しました。>
進の動きが一瞬止まった。
「次郎くん…あさって?」
ユキは進の行動で何となく内容が分かった。
<もしもし?古代くん?>
電話の相手が島の父に代わった。
<すまないね…休暇中に…あさっての午後1時、急で申し訳ないがいつまでも
大介をここに置いておくわけにもいかず…少し場所は遠いのだがどうかな、と
思ってね…差支えなければ自宅に来てくれたクルーの方にも声を掛けて
もらえるとありがたいんだが…。>
島の父が申し訳なさそうに言うので
「そんな…絶対に行きます。みんなに声を掛けるので場所を転送してもらえ
ますか?出発は何時ですか?」(進)
<11時に迎えのエアカーが来る事になっているよ。>(島の父)
「わかりました。その前に伺うようにします。…あの、数名増えてもいですか?」
進は長官と山崎と太助を呼ぼうとした。
<えぇ…ぜひ…本当に最期のお別れなので…よろしくお願いします。>
そう言って島の父は画面から消えて行った
「古代くん…」(ユキ)
「あさっての11時、出棺だそうだ…。」(進)
「長官に連絡するわ。」
ユキはそう言うと通信機を手に取った。
「お忙しい所すみません。」
ユキは休暇中だったが藤堂はもちろん、勤務中。
<ユキ、どうした?>
藤堂が笑顔で出た。
「あの、島くん…島航海長のご家族から連絡がありまして、あさって11時、
出棺だ、と…。」
ユキがそう伝えると“ちょっと待ってくれ”と言い後ろを向いて何やら話している。恐らく伊藤にスケジュールを確認させているのだろう…
<ユキ、私も行くから、と伝えてほしいのだが?>
「わかりました。島航海長の自宅に集合になっておりますが…」(ユキ)
<わかった。メインクルーが揃うのだろう?>(藤堂)
「はい、後…島航海長が眼を掛けていた太助くんも声を掛けようと思って
います。」
ユキは進なら必ず声を掛けるだろうと思い言うと進が頷いて聞いていた。
<太助か…徳川さんの子、だね。私も徳川君とは何度も一緒に飛んだもんだ…
一度話してみたいと思っていたんだよ。ちょうどいい…では当日。>
ユキは敬礼して通信機を切った。それからユキが山崎に、進が太助に連絡を取った後進が相原に連絡してメインクルーに伝えるよう頼んだ。
「「ただいま。」」
ふたりがユキの実家に戻って来た。
「おかえりなさい。お疲れ様だったわね。古代くん、もう体は?」
ヤマトが満身創痍で戻った時、進を心配したユキの両親は進の状態を聞いていた。
「はい…。」
進は自身がまだ点滴を毎日している事もあり返事を濁すとユキが助け舟を出した。
「まだ本調子じゃないけどかなりいい方に向かっているわ。無理しなきゃ
後一週間ぐらいで薬も卒業できるわ。」
ユキの返事にホッとした母に奥にいた父が
「玄関は冷えるからこっちでゆっくり話しなさい。」
と、声を掛けた。
「そうね、病み上がりによくないわ。」
母はそう言うとリビングにふたりを通した。テーブルにはいつものように母の手作りの料理が並んでいる。進は途中で買ったワインを母に手渡すと椅子に座った。ユキはキッチンで買って来たチーズを切り始めた。
「パパと古代くんで先に食べて。私とユキは用意が済んだら座るから。」
母がビールを二人に注いだ。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)3 作家名:kei