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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)3

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  「体はどんな感じなのかね?」

父は進に聞いた。

  「はい…銀河系へ向かった時に放射能にやられて…それから白血球の数値が
   落ち着かなくて…ずっと点滴をしています。でも平均値に戻ってきて
   いるのでそろそろ点滴も様子を見てもいい頃かも、って感じらしいです。
   ユキが看護士だったので自宅でそれが出来るのでとてもラクですね。私の
   主治医と連絡取りながらしてくれてるみたいで…私の気づかない所で
   いろいろしてくれるんです。本当に感謝してもどう言ったらユキに伝わる
   のか…。」

進がそう言うと父はニコニコ笑いながらこう言った。

  「進くんがそう思ってるだけでユキに伝わっていると思うよ。あの子は相手に
   感謝してもらおう、とかそんな事を考える子じゃない。自分にできる事、
   相手に良かれと思うとそれを一生懸命する子、だと思っている。私はそれが
   進くんの重荷になるんじゃないかと…そっちが心配だよ。」(父)

進には心配してくれる肉親がいない…ユキは“自分を心配している人がいる”と言う事を知ってほしい一心だった。

  「時々思う事があって…ユキが傍にいてくれたり何かしてくれたりすると
   “自分は一人じゃない”って実感するんです。こう…居場所、と言うか
   “いてもいいんだ”な、って思ってホッとするんです。」

進はそう言いながらビールを飲んだ。

  「そうか…進くんがそう思ってくれてるなら…よかった。」

父もビールを飲む。

  「進くんは…ヤマトが無くなって…これからどうするんだい?」

父が心配そうに聞いた。

  「はい…しばらくは地上勤務になると思います。飛べる戦艦もありませんし…
   護衛艦も数少ない。輸送船団が整うまで時間がかかるでしょう。私もしばらく
   地上で、と思っています。」(進)
  「そうか…今回…島くんが…」(父)
  「はい…一番の親友でした…まさか、でした。あさって…出棺なので
   メインクルー全員で行きます。」(進)
  「そうか…最初の記者会見の時進くんの左横にいた子、だよね?右の人は
   進くんのお兄さんの親友だって言ってた真田さん、だったよね。」(父)
  「はい…そうです。訓練予備生からずっと一緒だったので信じられなくて…
   島が実家に帰るまでずっと一緒にいましたが…いつ起きてもいい様な顔
   してて…。」

島の話をしているとユキとユキの母がビールを持って席に座った。

  「お邪魔しますね。」(母)

ふたりがしんみりした話をしていたので少し明るめに席に着くと進がビールを注いだ。

  「ありがとう。」(母)

ユキのビールは父が注いでいた。







しばらく今回の戦いの話をした後進が話を切り替えた。

  「あの…おふたりに大切なお話があります。」

進がかしこまるとユキの両親も箸をおいた。

  「アクエリアスの水が引いて地上に出たら式を挙げようと思っています。」

進がそう言うとユキの両親は驚いた顔をした。

  「本当なら…銀河系の探査目的が無事終えたら式を挙げようとユキに伝えて
   いました。まさかヤマトが負けて帰って来てその後すぐに戦いに赴くなど
   思ってもいなくて…。いつもは犠牲になった仲間の為に結婚する事を延ば
   していましたが今回は自分たちにとって何が大切なのか自分たちがどうし
   たら幸せになれるのかを考えました。
   私の頭にはユキと結婚する事が一番だと思ったんです。そしてそれを
   後押しするように艦長と島が遺言を残しました。ユキと一緒になれ、と。
   周りから見たらたくさんの仲間が戦死したのに式を挙げるのか?って責められ
   そうですが私は私の一番大切な人と一緒になると決めました。
   なので…もう一度…お願いに参りました。
   おふたりの大切なお嬢さんを私に下さい。」

進は立ち上がって頭を下げた。
<未来>
  「進くん…頭を上げて…座って。」

父が立ち上がり進の横に立ってそう言うと進は素直に椅子に座った。

  「そう、かしこまられると…反対してしまいたくなってしまうじゃないか。
   そうか…決心したか。まぁ一緒に暮らしているからよく知っていると
   思うがなかなか一筋縄じゃいかない娘だ。曲がった事、嫌いだし時々
   融通の利かない事もある。そうかと思えば自分の事全く考えないで行動
   してバカを見る事もある。
   だけど…心の底には誰かに守ってほしい、って言う弱いユキがいる…
   私達はそんなユキを守ってやれず反対ばかりして意固地なユキを作り上げて
   しまった。進くんはそんなユキに気付いているはずだ。
   不器用な娘になってしまったのは私達が育てるのが下手だったからだ。
   すまんが…今後は進くんに託すよ。見放してもこちらでは返品受付られ
   ないから…こちらこそ…よろしくお願いします。」

父親も進に負けないぐらい90度、頭を下げた。

  「ありがとうございます。ふたりで幸せになります。」

進も頭を下げた。ユキと母はそんな二人の姿を見て驚いたが大の大人がお辞儀をし合ってる姿が面白くクスクス笑ってしまった。

  「もう…いいですよ。二人とも頭を上げてお座りになったら?」

ユキの母がその場を収めた。男二人はおとなしく椅子に座る。

  「これで…地球が落ち着いてくれたら何も言う事はありませんね。」

母が涙を拭いた。








  「お母さんの食事、とてもおいしかったです。いつも食い逃げですみません。
   それでは失礼します。式の段取りは決まり次第連絡します。」(進)

夜遅くまで滞在した後ふたりはユキの実家を後にした。二人仲良く帰る姿をユキの両親はいつまでも見つめていた。








  「古代くん、突然なんだもん…驚いたわ。」

ユキがステーションに向かう途中歩きながら言った。

  「ん?」

進はユキの顔を覗きこんだ。

  「嬉しくて…涙が出そうだった…一生懸命耐えたわ。」

その瞬間涙が流れた。進がそっとその涙を拭いた。

  「でもやっぱり親、ってすごいよな。どんなに離れていてもユキの事、
   ちゃんと見てる…前に真田さんに同じ事を言われた事があるよ。」

進はそっとユキの手を握った。

  「“ユキは弱い人間だ、でも自分の回りに鎧を付けて強く見せている”って。」

ユキは真田がそんな風に自分の事を言ってる事を初めて知った。

  「その時気付いた。真田さんもユキの事愛してるんだ、って…だけどその
   “愛”は親が子を想う心、みたいなそんな感じ…って言うか…こう、普通
   そんな感情に気付いたら妬いちゃいそうだろ?全然そんなじゃなくて
   さぁ…うまく言えないけど……」

進の手に力がこもる。

  「真田さんはずっと一緒にいてくれた…15.6ぐらいからずっと一緒にいたから
   お父さんみたいな…そんな感じだった。真田さんの後ろを…背中を追って
   いけば間違いはない…みたいな感じで“この人の役に立ちたい!”って