島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)3
「古代くん、この一生を誓った彼女、と言うのが?」
島の父が涙を拭きながら尋ねた。進と相原以外はこの手紙を見た事がないので父親はそれを母に渡し、それからクルーに見せた。
「…はい。テレサです。」
進が父親の眼を見て言った。
「テレサは…ご存知と思いますが地球に白色彗星の脅威を教えた後自らの
母星を自爆させ白色彗星の動きを鈍らせました。その後テレサは島を追って
来ていました。偶然、デスラーとの戦いで被弾した島をテレサが救いだし
島は命を取り留めました。テレサは傷ついた島を自らの血で救いその後
巨大戦艦に戦いを挑み散って逝きました…。島がずっと意識を失っている
間、島の魂はテレサの元にいました。」(進)
「なぜ…そう思われるのですか?」(父)
「ユキが…テレサと夢の中で話したそうです。もちろん島はその意識はあり
ません。だけどふたりで飲んだ時ポロっと言ったんです。“戻りたくない”
と言う意識があったような気がする、って…。とにかく暖かくて帰りたく
なかった、って…。多分、血を分けてもらっている時温かさを感じたんだ
と思います。」
進の言葉をクルーも静かに聞いていた。次郎も一生懸命聞いている。
「島が…逝ってしまってユキがまたテレサと話しました。血を分けてから
ずっと寒かった、と…握った手が冷たかったけどだんだん温かくなって
来た、と。島がそばに来たから温かくなった、と言ったそうです。」
母は我慢できず声を殺して泣き始めた。ユキがそっと手を握る。
「じゃぁ…大介はこの手紙の通り…今幸せなのでしょうか?」
父が島の顔を見つめた。
「はい…。多分、私達を見て“なに泣いてるんだ?”って言ってるかも
しれません。」
進の眼から涙が零れ落ちた。
「古代くん。」
そろそろお暇を、と思って食器などを片付けていたら島の父に呼び止められた。
「はい。」(進)
進が振り向くと島の父親が軍の端末と通信機、端末を持っていた。
「これ…古代くんに預けようと思って…この二つは軍に返さないといけない
物だろう?(軍の端末と通信機を先に渡した)で、この端末…古代くんに
預けようと妻と話し合ったんだ。携帯は次郎に持たせようと思う。
それと…」
そう言って父はポケットから封筒をいくつか出した。
「さっき…レポート用紙をパラパラしていたら後ろの方にクルーの皆さんへ
宛てた手紙が残っていて…ひとりひとり封筒に入れたので持って帰って
もらえますか?」
封筒には一人一人の名前が書かれていた。
「ただ…艦長はお亡くなりになられたんですよね?」
一番上に沖田艦長宛ての名前が書かれていた。
「それは…私が預かり長官に渡します。」(進)
「長官に?」(島の父)
「長官と艦長は同期で親友でした。なので…」
進は自分と島と同じ関係だと言いたかった。島の父もそれを察して頷くと
「そうか、じゃぁこれは古代くんに預けよう。」
と言って沖田艦長宛てと進のを渡した。そしてひとりひとり話しかけながら島からの手紙を渡した。
「山崎機関長と太助くん、と言う方は?」(島の父)
「それは私が預かります。」
真田が手を出した。
「機関部門の責任者です。私が連絡を取る機会が多いので…よろしいでしょうか?」
真田の申し出に島の父は“よろしくお伝えください”と言いながら手渡した。
簡単に片づけを手伝うとクルーは島の自宅を後にした。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)3 作家名:kei