島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)3
クルー達は地下都市の寮に戻って来た。すぐにそれぞれの部屋に入らずラウンジに向かいソファーに腰を下ろした。
「島…。」
進がそうつぶやきながら胸ポケットにしまった島からの手紙を取り出して封を切った。
古代へ
お前は絶対戻って来ると信じてた。
白色彗星との戦いの出発の時、古代はどんな気持ちで俺を待ってたのか?って
ちょっと考えちまったよ。
何となく…この戦いが俺にとって最後の戦いになるような気がしてならない。
深い意味はないがなぜかそんな気がする。
テレサが呼んでいるのか?
そんな気もするがこの戦いに負ける気はしない。
ヤマトはそんな弱い艦じゃない。それは古代が一番よく知ってるはずだ。
なぁ、予備生だった頃…懐かしいな。古代が最初に来た時女の子かと
思ったよ。だけど古代の眼がすごい印象的で引き込まれるようだったのを
覚えてる。まさか一緒の艦に乗り込めると思ってなかったからタイムマシン
があったら過去の俺に教えてやりたい気持ちだよ。
「俺が惚れた女を彼女にするんだ、もっと意地悪していいぞ」ってな。
俺と古代は相原と加藤と山本とは違うなにかがあったと俺は思ってる。
それは俺の思い過ごしじゃないと思えるんだ。
俺と古代…お前にはユキがいたけどお前の一番近くに俺がいたと今でも
思ってる。そして古代がいたから俺は俺でいられたんだ、と思う。
絶望しかなかった世界で前だけを見て進んでた古代。
古代がいなかったら予備生全員の考えもネガティヴだったかもしれないな。
俺と古代は一生の親友だと思ってる。
そして親友の彼女は親友だ。
俺はユキが好きだった。今でももちろん好きだ。
だから絶対に幸せになれ。ユキの笑顔を守れ。
俺は両親に幸せの報告をできないまま向こうでテレサと幸せになる。
それが親にとって決していい事じゃないって分かっていたけどやっぱり
テレサ以上に好きになれる女性はいなかったし今後も出てこないと思う。
俺の人生、決して不幸じゃなかった。
古代に対しての負け惜しみじゃないぞ?俺はお前に負けてない、って
思ってるからな!
周りが何と言おうと古代とユキの幸せは二人にしか分からない。
思ったように進め。
俺はずっと古代と一緒にいるからな。
お先に… 島
進の眼に涙はなかった。
ユキは進がポケットから島の手紙を出すのを見て自分の手紙を取り出した。みんながそれぞれ島の手紙を手に取る。
ユキへ。
ふたりの結婚式を楽しみにしてたのに見れなくて残念だ。
はるか遠い過去の様な気がするけどその相手が自分であってほしいと
願った事もあった。
イスカンダルへ行った旅…あの時俺はユキの事が好きだった。
あの頃真田さんと俺たちと話し方が違うから何となくユキと真田さんは
付き合っている、と思い込んでたんだ。
最初この第一艦橋に“なんで看護士の森さんがいるんだ?”って思ったよ。
だってナース姿しか見た事なかったから“え?”って思ったけど最初の
ミサイルを撃破した時…すげぇ、って思った。俺達が見た事もない様な
古いレーダーをしっかり読みとてるんだもんな。
その後から太田との連携がすごい良くて欲しい情報もしっかり押さえてて
くれて本当に助かった。
まぁ…仕事の話はこれぐらいにして…
古代の事、頼むな。
テレサの事、話聞いてくれてありがとう。
泣くなよ、人の前で…泣く時は古代の前と俺の前だけにしろよ。
ユキは自分の事余り深く考えてないみたいだからはっきり言うけどユキは
かなり“美人”の部類に入るんだよ。だからユキが泣いたりしたらその辺の
男は黙ってないわけ。女の涙は武器だからな。それは古代への最終兵器
としてとっておけ。
俺は多分…と言うか自負してるけど古代に一番近い人間だと思ってる。
だから何でも言ってほしかったし誰よりも古代とユキに幸せになってほしい
と心から思ってた。あいつ、ドン臭い所ばっかりだろう?これからあいつの
事の相談を受けてやれないのが一番心配だ。こういう時“兄貴風”吹かせる
な、てあいつは言いそうだな。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)3 作家名:kei