島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)3
多分、俺が死んだ時ユキも泣いてくれたと思う。
次に思い出す時は笑顔でな。
俺はテレサと一緒だから…ユキより幸せだから安心してくれ。
それと…早く結婚しろ。
俺と…先に逝ってる仲間もユキのドレス姿楽しみにしてるはずだ。
古代とユキが幸せになる事がクルーの希望になるはずだ。
ユキ、この先古代に何があっても一生信じてやってくれ。
古代にはユキしかいない。もう、絶対、手を離すなよ。
ほんの数年だったけど10年以上の親友の様だった様な気がする。
ヤマトに乗れて、ユキと出逢えて本当によかった。
ありがとう。
そして、幸せになれ←命令形! 島 大介
ユキは溢れそう涙を必死にこらえた。誰もが涙をこらえている。
「あいつ、人の事ばっか…」
進が一言つぶやいた。
「え?何言ってんの?自分の事、棚に上げて…」
南部がメガ値を拭くふりをして涙を拭いた。
「人の事ばっかり優先して自分の事いつも後回しだったの気付いてないだけ
じゃないですか?」
南部の突っ込みに進が驚いてると
「そうそう…古代の兄貴は取り敢えず自分の事優先だったけどな…」
真田が笑いながら島からの手紙を胸ポケットにしまった。
「島くんはいつも手紙を書いていたのかなぁ…」
素朴な疑問を相原は口にしながら手紙をしまった……が、太田だけが号泣している。
「太田…。」
隣にいた相原が声を掛けると相原に抱きついて泣いた。
島と太田は進と南部と同じだった。何も言わなくても相手の次の行動、何が欲しいと思っているのかがすぐにわかる、そんな存在だった。
太田はヤマトの操縦かんを握った事、ほとんどない。せいぜい自動走行の設定の確認ぐらいだ。傍から見たら島が全く太田を信じていないようにも見える。
太田が泣きながら島の手紙を相原に差し出した。相原がそれを受け取るとみんなの顔を見た。
太田へ
今までありがとう。
太田にはこれ以上の言葉が見つからないよ。
太田と最初に会ったのは月の寮だったな。
最初は“大丈夫か?”って思ったけど一緒に訓練して行くうちに
しっかりやらないとコイツに全部持って行かれる!って思った。
太田が月に来てから俺は本気になった。それまで航海科で人を抜く事は
あっても抜かれる心配なんてなかったから。初めて“ヤバイ”って
思ったのが太田だった。
太田はいつもニコニコしてて穏やかで…第二艦橋にいるとなぜか落ち着く
自分がいて…ホント、不思議なヤツだな、って思ってた。
イスカンダルに行った時、未知の事ばかりで大変だったよな。
航海が遅れちゃぁ戦闘班とバトルして…修理が遅いと技術班とバトルして…
エンジンの調子が悪いと機関室のクルーとバトルして…
気付くと周りは敵だらけ、状態だったのにいつからか…そんな空気が
なくなってた。
あとからユキに聞いたけど太田があちこち部署に回って歩いて誤解を解いて
くれたらしいな。技術班と一緒に修理を手伝ったり機関室の見回りや
点検を一緒にした、って…。さすがに戦闘班の手伝いは出来ないけど
自由時間に柔道の技を教えてた、って聞いた。まぁ柔道と言えば太田の
代名詞だからな。月基地でいったい何人太田の後ろでノビてたか…太田を
敵にまわしちゃいけない、って心底思ったよ。(多分それは俺だけじゃ
ないはずだ。)
ヤマトは長い航海を想定して作られた艦。長い航海をする上で大事なのは
コミュニケーションだと太田が俺に教えてくれた。
確かに太田のトレースは世界一だけど俺は航海の成功はそれだけじゃない
って、太田が各セクションとの潤滑油役をしてくれたからヤマトの航海は
成功したんだ、言える。
俺は一足早く休む事にした。
特別疲れたわけじゃないけど神様が早くテレサと一緒にいられるように
準備しておけ、って言ってる気がする。
一度負けた相手に負けるわけにいかない。
ヤマトはそんなヤワな艦じゃない!それは俺たちが一番よく知ってるはずだ。
太田、俺がいなくなった後、頼むな。
それと古代を頼む。一緒に仕事する時突っ走らないように…俺の代わりに
頼む。
それと、早くいい彼女見つけて俺を安心させてくれ!
島 大介
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)3 作家名:kei