島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)3
相原が涙を流しながら読み上げた。
「島は…絶対的な信頼を太田に寄せていた。普段の航海もできれば一緒に
したい、と言ってた。軍のトップクラスのパイロットを同じ艦に二人も
乗せる事するわけないからなぁ…島と飲みに行った時そう、嘆いてたよ。
もっと気の利くヤツはいないのか!ってね。」(真田)
ヤマトの作った航海図は今地球防衛軍だけでなく民間の宇宙船も利用する航海図の元となっている。その大元を作ったのは太田を中心とする航海班の航海図作成班。太陽系がガルマンガミラスの惑星破壊ミサイルで危機になった時、移住先を探すために銀河の中心へ向けて行った時の航海図は宇宙科学局で今後に役立てようと研究が進んでいる。
「島ぁ…俺、この先どうしたらいいんだよぉ…」
「太田…」
涙の止まらない太田に進が声を掛けた。
「島は太田に将来を託したんだからお前がしっかりしないと防衛軍のパイロット
達をひっぱって行けないぞ?太田と俺は一緒に乗り込む可能性があるんだ。
太田は太田らしく…な!」
進は島の手紙をしまった胸をトントンと叩いて
「俺はもう、泣かない…島に負けてられないからな。」
そう言って笑った。誰もが涙を流していたが進だけが笑っていた。
「だって、悔しいだろう?死んじまったあいつが幸せで生きてる俺たちが
幸せじゃない、なんて。いつか…島に会う事が出来たら“俺の方が幸せに
決まってるだろ!”って言ってやりたいんだ。太田だってそう思うだろ?
だから頑張ろうぜ?島に負けないように…」(進)
「そうだな…そうだよな。今からでも間に合うかな?」(太田)
「当たり前だろ?俺達、生きてるんだから!」
進は自分に言い聞かせていた。
「さて…そろそろ解散するか。」(真田)
真田が大きく伸びをした。
「え~生活班の私には4週間の休暇が出ています。前回の航海と間を置かず
戦闘を行い、ほぼひと月に渡り休暇がなかった事と本来なら長く病院に
入院するか長く通わなくてはいけない状態だったにもかかわらず急いで
退院し次の戦闘に備えるなどきちんとした医療を受けられなかった、
と言う事でその後体調の整わないものは休暇の延長を認める、とメールが
配信されています。」
相原が自分に届いたメールを見て言った。
「多分、みんな同じだと思いますよ。」
そう言った相原も多きくため息をついた。
「そうだな…出発の3日前に退院した時は“10日間は安静にして下さい”
って言われたもんな。地球、水没する、て!って思ったもんな。」(南部)
「そうそう、だけど新型のコスモクリーナ、いい仕事してくれたんですね。
さすがは技術班ですね。」(太田)
「あぁ…そうだな。宇宙服を着た者は意識を失った状態だったからな。
それよりすごいのはヤマトだ。何かのはずみで自動操縦になったんだろう
けど…走行しながらきちんと最低限の修理を終わらせてたんだ。直前に
クルーが外壁を修理できないエリアなどの時のために試作品で作った自動
修理機能が役に立ったよ。」(真田)
「地球に戻って来た姿を後から見ましたが被弾した跡がなかったから不思議に
思っていたんだけど…そうだったんですか。」(相原)
「でも…やっぱりユキを乗せなくて正解だったかもしれん。」
真田がユキを見て言った。
「一週間の音信不通は生きた心地がしなかっただろうが…」
真田のバツ悪そうな顔をみてユキは太陽系中心部へ飛んだ航海の事を思い出した。
「そうだったわね…短期決戦が二度も続くなんて…これが最後であってほしい
って思うわ。ディンギルの少年も…やっと私達に慣れてきた頃だったのに
とても残念だわ…。」
進はディンギルの少年の最期を思い出し下唇を噛んだ。
「古代、島の実家から連絡が来たら教えてくれな。」
真田が進に声を掛けた。埋葬日がきまったら連絡くれる事になっている。
「はい…みんなにも知らせるから…」
進がそう返事をするとそれぞれが自分の部屋に戻って行った。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)3 作家名:kei