島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)3
「じゃぁ古代くん、おとなしく点滴しててね。」
シャワーから上がった進はおとなしくベッドに横になり左腕を出して点滴をした。
「あぁ。」
進の返事を聞いてユキはベッドルームの扉を閉めた。進は静かに落ちてくる点滴を眺めていた。
(こんな透明の液体ひとつで体調が変わるんだからすごいよな。)
進はそんな事を思いながら疲れからかいつの間にか眠りに入った。
「古代くん?」
ユキがシャワーを終えて点滴の様子を見にベッドルームのドアをノックしたが返事がないので部屋に入ると左腕をだらん、と出してぐっすり寝ている進がいた。
「疲れたわよね…」
点滴を見るとまだ30分以上はかかりそうだ。ユキは進と初めて会った頃の事を思い出していた。
「最初に会ったのは…中央病院で、だったわね。島くんと一緒にいて…
私の事すごい眼で見てたからツンツンしちゃったのよね。あれからほんの
数年しか経っていないのに…なんだか10年ぐらい一緒にいるみたいな
気がするわ。それだけ濃い時間だったのかしら…。ヤマトに乗りこんで…
最初、なかなか溶け込めなくって真田さんと一緒にいた事が多かったけど
だんだんみんなが話しかけて来てくれるようになってとても嬉しかった
なぁ…」
ユキは進の髪をそっと整えた。
「なんだか…精悍な顔つきになった、って感じかしら?ついこないだまで
“少年”って言われた頃だったのにね。世間から大人にされちゃったの
かしら…喜怒哀楽がすぐに顔に出て…かわいいなぁって思ってたのに
いつの間にか私の心に入って来て…今こうして一緒にいる事が信じられない
時があるわ。」
ユキは進の右手をそっと両手で包んだ。
「ずっと…私だけを見て…私だけを愛して…私を一人にしないでね。」
ユキは進の寝顔を飽きる事無く見続けた。
「おはよう。」
進がベッドから出てきた。すでにユキは起きていてコーヒーを落していた。
「おはよう。よく眠れた?」(ユキ)
「うん、点滴のおかげかな?」
ユキは“そうかもね”と言ってミルクをレンジで温めるて落したばかりのコーヒーを入れて進に出した。
「うまい…。」
進は満足そうにソファーに寄りかかった。
「さてと…朝一番で悪いけど検査させてね。」
ユキがソファーに座る進の前に膝をついて座り進の手をとり自分の手と進の手を消毒した。進も嫌がらず待つ。チクっとした後ヤマトの中でしていた検査と同じ事をしてもらっていた。ただヤマトの中と違いユキも進もラフな格好をしている…のでユキの胸元が見える。
「いやだわ…そんなに見ないでくれる?」
進の視線をずっと感じていたユキが恥ずかしそうに背を向ける。進はその後ろからそっと抱きつくと耳元でつぶやいた。
「ヤマトのクルーにもそうやって医務室で見つめられてるんだろう?」
「え?」
ユキが驚くと
「妬けちゃうよなぁ…ヒザが触れそうな距離で…包帯まいたり…注射したり
いつだって俺が独占したいのに…」
今まで進がそんな風に思っているなんて想像した事もなかった。
「うそ…そんな風なそぶり見せた事ないじゃない…。」
進が話すたびに耳元に進の息が触れる。
「悔しいじゃないか…ヤキモチ妬いてるのがみんなにばれると…南部なんか
絶対それをダシにするだろうし…」
進の腕に力がこもる。
「古代くん…痛いわ…」
ユキが訴えるが
「これも…痛い?」
進がユキの耳を噛んだ
「古代…くん?」
ユキの力が少し抜ける
「あの時は自分が生きてる感じがしなくて…どうしたいのかわからなかった…
でも今は…ユキを……。」
進はユキの首筋に舌を這わせた
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)3 作家名:kei