島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)4
「お世話になります。(ふたりで頭を下げる)」(進・ユキ)
一般市民が地上に出始めた頃、ふたりは南部の父が経営するホテルのロビーにいた。
「いやいや、いつも康雄が世話になって…ありがとう。」
南部の父が握手を求めてきたので進も右手を出した。
「森さん、おめでとう。延期していた式を執り行うと康雄から聞きまして…
できる事は全てやらさせていただきますから遠慮なくプランを申し出て
ください。」
進とユキは“延期”という言葉に一瞬止まった。確かユキは南部に“キャンセル”と言ったのに…
「いえ、康雄が無期延期で、って…必ずここでやるからキャンセル料が
発生しないように延期で、って…」
父の言葉にユキが南部を見る。
「実はユキさんからキャンセルの連絡が来る前に…ヤマトを乗っ取る計画を
立てた時、すぐに父親に式の準備を止めるよう言ったんです。今からなら
食材を止められる、って。まぁ当時は地上に出られた嬉しさから地下で結婚
した人たちが地上で式を挙げるのが流行っていたので食材が余るという事は
なかったので大丈夫でしたが…」
南部がそこまで気を使ってくれていた事に進もユキも驚いた。
「だから俺に相談しないで別の所で挙げる、ってなったらどうしようかと
結構ヒヤヒヤしてたんだ。」
二人は初めて南部の胸の内を聞いた。
「知らなかった…悪かったな…ごめん。」
進が謝ると
「まぁ…終わった事ですから…ね。ほら、今度こそもうキャンセルはなし、
ですよ。二度目の延期はないですからね。」
南部もとても楽しそうに話す。
「俺らにとっちゃレクみたいなもんですから。」
そう言う南部に南部の父が
「康雄、お前の大事な友人の結婚式だろ?」
と咎めたが南部はわれ関せず、で
「いいんです。散々心配させられましたから。…まず英雄の丘、ですねぇ~
そこで式を挙げる事は実は長官に了承もらっています。あそこは軍の土地に
公園を設立した、って事なので軍の了承を得らえれば大丈夫です。そこは
相原を通じて…(ニヤっと笑う)で、英雄の丘からシャトルバスで移動、
ここで披露宴、って事になりますが…軽く、と言ってもクルー全員+
ユキさんのご両親、島、加藤、山本の家族、となると結構な人数になる。
人数的にそれ以上だれかお呼びしますか?」(南部)
「そうね、長官夫妻と晶子さん…くらいかしら?」
ユキが進の顔を見ると進が頷く。
「了解…ユキさん、お色直しとか考えてます?」
南部の言葉にユキが止まった。
「…全く…古代も古代ならユキさんもユキさんですね。」
南部の言葉に南部の父も笑っている。
「時折見かける森さんと同一人物と思えないな。」
ユキは人の結婚式も出た事がない。
「…だって……入籍だけでもいいかな、って思ってたから…。」
ユキがポロっと本音を言う。
「はぁぁぁぁぁ…分かりました。ウェディングドレスはお持ちでしたよね?
(ユキが頷く)それ、急いでクリーニング出しましょう。そして他のドレス
は悠輝に頼みます。今日これから、時間ありますか?(二人とも頷く)
急ぎなので…(父の顔を見て)うちの実家で選びましょう。」
進は頷く事しかできない。
「え…いいの?ご迷惑じゃ…」
ユキが聞くと父が
「いいですよ。悠輝も近所に住んでいるのですぐに動けますし…それに今は
どこもイベントしてませんから悠輝も暇でしょう。」
そんなそばから南部が悠輝に連絡を取っている。
「OKです。すぐにでもスタンバイできるって。このまま移動しましょう。」
南部は次の準備を着々と進める。
「親父に中の事、お願いしていいかな?」(南部)
「任せてくれるならやるぞ?」(父)
「まぁ挨拶は乾杯と一緒に長官にやってもらって…後は3回ぐらいお色直し
すればいいだろ?スピーチとかは…(進が首を振る)だ、そうです。
(父の顔を見て…)料理は喰うやつ呑む奴たっぷりだからエンドレスで
出せるようにして…一晩借りていいでしょ?」
南部が普通なら無理な注文を父に出す。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)4 作家名:kei