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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)4

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ユキは真田からユキが死んだと思われてからの進の事を聞いたことがあった。

ユキの遺体の安置された部屋に一日中篭り寝食も忘れてただ座ってユキと一緒にいた事…誰もが進に声を掛けられない程だった…と。

  (私の時もきっと同じだったんでしょうね。あんな風に取り乱したのよね…)

  「古代くん、ありがとう。」

進はユキが急にお礼を言ったので驚いてユキの顔を見た。

  「古代くんが呼んでくれなかったら…一緒にいてくれなかったら私、諦めて
   そのまま本当に死んでいたかもしれない。」

ユキが進の手を握った。

  「古代くんの手…いつもあんなに温かいのに今日は冷たいわね…。
   あのね、私…ずっと前に思い出した事があるの。いつの記憶かわからなくて
   考えていたの。だけど…今日、分かった。」

進が不思議そうに聞いている。

  「私が…半透明の何かに包まれているの。そこから私が寝ているのが見えて
   いるのにその私に近付く事が出来ないの。私のそばに古代くんもいるのに
   古代くんは私に気付いてくれない…ただ一人気付いてくれたのは沖田艦長…
   沖田艦長は私に気付いてくれるんだけど包まれているものから出しては
   くれなかった。どれだけの時間が過ぎたのか…私はいつものように何かに
   包まれていて…その中は暖かいのに私は寒くていつも丸まっていたの。
   そこへ真っ白な光が広がって…。」

ユキが進の顔を見た

  「私のそばにいた古代くんは死んでる私と一緒にいた古代くん…何かに
   包まれている私は仮死状態の私の意識。真っ白な光は沖田艦長だった
   のか…デスラー砲だったのか…判らないけど。」

ユキは一呼吸おいて

  「島くんは…そのままテレサさんの所へ行ってしまったの。島くんは冷たく
   なってしまったけどテレサさんに暖めてもらってるはずよ。」

ユキの大きな瞳から涙が零れ落ちた。

  「ね?…島くんをテレサさんに返してあげよう。古代くんには私がいるわ。
   真田さんだって…相原くんも…南部くんと太田くん。忘れないで…
   古代くんは一人じゃないの。」

進の涙はいつの間にか止まっていた。








  「先ほどは取り乱して失礼しました。」

進が島の家の控室に向かいそう言って頭を下げた。

  「いえ…それ程までに惜しまれる、ってすごい事だと思うわ。ありがとう。」

島の母が真っ赤な目でそう言った。

  「さぁ…私達は先に済ませてしまいましたが…精進料理を食べてください。」

ユキと進は二つ残ったお弁当のある席に座った。

  「どうぞ。」

お茶を次郎が運んできた。

  「次郎くん、ありがとう。」(ユキ)
  「次郎…さっきは済まなかった。次郎があんなにしっかりしてるのに…
   ちょっと大人気なかったよな。」

進が素直にそう言うと

  「でも…兄ちゃんの事、好きだから、だよね。僕、嬉しかった。そう思って
   るのが僕とお父さんとお母さんだけだったら寂しいもん。」

次郎はそう言って笑った。

  「兄ちゃんがやりたい事は早くに探せ、って…僕、兄ちゃんみたいになり
   たいんだ。強くて何かを護る人になりたい、って…。」

進は次郎の顔をしっかり見た。

  「そうだな…一緒に働けたら…嬉しいな。防衛軍で待ってるよ。」

進は島の両親の事を思うと複雑な心境だったがパイロットになるだけが宇宙戦士じゃない、と思った。