島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)4
「南部…こんなお酒の席で頼む事じゃないかもしれないんだけどさ…。」
進が南部の隣に移動して声を掛けた。南部は即ピンと来たがから揚げをつまみながら“なんだ?”と聞き返した。
「ユキと式を挙げようと思う。」
少し照れくさそうに進が言った。
「マジか?」
予想はしていたがやはり嬉しい。
「そうか…決めたか。」
なぜか南部の眼に涙が…
「バカ、なんで南部が泣くんだよ。」
突然の南部の涙に驚く進。南部は他の連中に分からないようにメガネを拭くふりをして涙を拭いた。
「古代こそバカだろ?あんなステキな人をずっと待たせて…普通ならもっと
いい条件のところへ行っちまうぜ?」
南部はメガネを掛け直した。
「おめでとう。」
南部が右手を出してきたので進も素直に右手を出して
「ありがとう。」
と言った。
「で、どうしたいんだ?」(南部)
「小さくていいから…って思ったんだけど…ヤマトを見送った仲間を呼びたい
なぁ、って漠然と思ってて…で、沖田艦長と加藤、山本にユキを見せて
あげたいから英雄の丘で式が出来るかなぁ、って…。」
進の提案に青空挙式もいいか、と南部の頭が回転を始める。
「よし…俺に任せろ。ばっちり決めてやる。その後は南部ホテルで会食で
いいか?簡単に済ませるなら立食かな。どっしりやるか?」(南部)
「う~ん、その辺りはユキと相談するよ。でもできれば簡単に済ませたい
って感じなんだよな。挨拶とか何もなくていいから…とにかくクルーが
普通に集まれれば、って感じで…。」(進)
「わかった。任せろ!南部財閥にできない事はない。他に何かあるか?」(南部)
「いや、特にないんだけどユキと島、山本の両親は呼びたいんだ。」
山本の両親は遺体を引き取りに来た時に式を挙げる時は知らせてほしい、と言われていた。それが今も有効かわからなかったがそう言われて報告しないのは…と思った。
「山本の実家な?わかった。日は?」(南部)
「水が引いて普通の生活に戻ったらすぐにでも、って…」(進)
「そうか…。」(南部)
「それと…ユキが前にお前の所でキャンセルしたから南部に頼むの少し
ためらってるんだ。俺も、なんだけど…いいか?俺、そういうの疎くて
式場の相談室に行くのも恥ずかしくて…。」
進が頭を掻く。
「何今更遠慮する必要がどこにあるんだ?もし何も相談されず勝手に式場
予約してたら縁、切っちゃいますから!」
南部が笑顔で言う。
「いいですか?ユキさんは古代だけのモノじゃないでしょ?ユキさんは
みんなのモノ!わかってます???」
南部が詰め寄る。
「デザリウムへ行った時…ユキさんがいなくて大変だったの覚えてますか?
ユキさんは俺らにとってもいなくてはならない人なんです。だから俺ら、
力になりたい、って思うんですよ。それに…」(南部)
「それに?」(進)
「島の手紙に古代の事も頼む、ってあったけどそれ以上にユキさんの事を
頼む、って書いてありました。島、ユキさんの事心配でしょうがないみたい
ですよ。本当に信用、ないですね。」
ヤマトでは進>南部だがヤマトを下りると進<南部だ。
「司会に相原を置きましょう。そつなくこなせそうだ。」
南部の頭の中で式は始まっているらしい。進の頭の中は真っ白だ。
「まぁプランが出来たらざくっと打ち合わせだな。」
南部がビールを一気に飲んだ。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)4 作家名:kei