島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)6
「康雄。」
悠輝とメイクさんが南部のそばにやってきた。
「お疲れ。どうだった?」(南部)
「いやぁ、モデルがきれいだと疲れないよ。どうやったらもっとマシになる
かなぁ?とかどうしたら映えるかなぁとか考えなくていいから。」
悠輝の答えにメイクさんもにっこり笑う。
「そうか…じゃぁ次はあそこにいる身長の高いヤツとその隣にいるこう…
きれいなお嬢さん、いるだろう?まぁ何年後になるかわからないが次は
あの二人だから頼むな。」(南部)
「へぇ…また違うジャンルの美女だね。」
悠輝の頭の中でデザインが回り始める。
「彼女、防衛軍長官の孫娘だからね。」
南部の言葉に頷く悠輝。すぐにデザインが頭の中を駆け巡る。
「あ、そろそろ帰ろうと思って。」
悠輝の言葉に時計を見るとすでに日付が変わっていた。
「もうそんな時間だったんだ。」
南部が驚く。
「花嫁さん、多分結構疲れてると思うから早めに控室に返してあげてね。」
悠輝はそう言うとメイクさんと一緒にフロアーを出て行った。敢えて進とユキに声を掛けずに…。
「ふふん、絶対控室になんか返すもんか。今日は古代のユキさんじゃなくて
みんなのユキさんだからな。」
南部のことばに真田がふと笑った。
「ユキさん、今日は随分いい眼の保養をさせてもらいました。そろそろ
ドレスじゃお疲れでしょう?着替えてきたらどうですか?」
南部が声を掛ける。
「そうね、これじゃ食べられないし。」
立食、という事もあるが主役が部屋の隅で座って食べる姿もちょっと…と思い一度着替えに戻る事にした。
すでに時刻は午前2時。
普通は2時間で終わらせる披露宴を延々と何時間もしている。まぁ披露宴と言ってもヤマトの座談会、と言う感じだが…。
「ちょっと席、外すわね。」
進がユキの手を取りふたりはフロアーを出て行った。
「お疲れさん。食事は摂れたか?」
南部は近くにいた太助に声を掛けた。
「大丈夫です。交代交代で食べましたから。」(太助)
「そうか…いいの、撮れたか?」(南部)
「はい、坂巻さんと相談して班に分けてほぼ全員分のコメントもバッチリ
収録しました。新婚旅行から帰って来たらこのビデオみて笑えると思い
ますよ!」
太助と坂巻は班ごと、もしくはグループで“おめでとうコメント”を収録していた。太助と南部が話していると坂巻も来た。
「南部さん、総監督お疲れ様でした」
坂巻の言葉に南部はよしよし、と頷く。
「さて…後は第一艦橋のみなさまのコメントでシメとなります。ご両人…
あれ?戦闘班長と森さんは?」(坂巻)
「今、着替えに戻ったよ。ドレスは疲れるからさ。」(南部)
「じゃぁちょうどいいか…通信班長と機関長、技師長と太田、連れてきて
くれよ。」
坂巻が太助に言う。
「了解!」
太助が元気よく敬礼するとカメラを構えながらメインクルーに声を掛けに行った。
「坂巻さん…お疲れ様でした。すみません、先輩なのに…」
坂巻は第二の地球探しからヤマトの乗組員になっている。
「南部砲術長、何を申しておりますか!」
アルコールも入りいつもテンションの高い坂巻だがもっとテンションが高い。
「私はヤマトに乗れて本当によかったと思ってます。周りには上司が年下だ、
とかいう輩もいましたが私はそんな事どうでもよかった。ヤマトに乗り
古代戦闘班長と南部砲術長と仕事がしたかったんです。その夢が叶い…
もう、ヤマトはありませんが自分のこころにはいつもヤマトがある、と
思います。」
坂巻は胸を張った。
「多分…いくつになっても……自分がおじいちゃんになっても一生の誇りに
なると思うんです。ヤマトは今まで自分が配属されたどの艦とも違いました。
こう、表現が当てはまるかわかりませんが“生きてる艦”という感じで
した。それに戦闘がない時は自由で…他の艦に乗るとそれこそ上下関係が
すごい厳しくて自室にこもって出てこない新人が多く…その辺りヤマトは
真逆で誰もが自由でした。まぁ自由すぎてケンカもありましたが…。」
坂巻は笑顔で話す。
「こんな結束の固いチームに入れて本当によかった。年上の私が言うのも
なんですがやはり上に立つ人の人望だと思いますよ。厳しいだけ、甘い
だけの上司ではバラバラになってしまいますが普段の古代さんはあんな
だし…南部さんがそれをうまくフォローして…多分、そんな戦艦…ありま
せんから…。」
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)6 作家名:kei