島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)6
「それじゃ、皆様しか知らない二人を教えてください。」
坂巻はインタビュアーに扮しているようだ。
「んあぁ?いっぱいありすぎてなぁ。」
南部が相原を見る。相原が太田を見る。太田が真田を見て真田が山崎を見る……誰もがいっぱいありすぎて…そして言ってもいい事かどうなのか分からない。
「最初、怒られてばかりだったんですよ。もちろん、古代くんが。」
口火を切ったのは太田だった。
「と、言っても古代くんと島くんがよくケンカしてたのを仲裁、って言うか…
仲裁に入るんだけど余りにもケンカのレベルが低くてふたりともユキさんに
怒られてたりとか…」(太田)
「え?それって何でケンカ?」(坂巻)
「イメージルームの画像だったり場所取りだったり…」(太田)
「くっだらねぇ!」
坂巻が噴出しながら叫ぶ。
「まさか南部さんも参戦なんて?」(坂巻)
「冗談じゃないですよ。そんなアホに付き合ってられません。」
南部は高みの見物派だ。
「まぁまだ十代が多かったからふたりがケンカをし出すと赤チームと緑チーム
のケンカに発展しちゃうからな…」
南部は当時を思い出してくくく、と笑う。
「俺と太田は長い付き合いだから“また始まった”と思いながら見てるん
だけど当事者は違うんだよ。後からなんでお前は参戦しないんだ、って
怒られる。確かに月基地にいた時は古代に売られたケンカを頼まれてない
のに一緒に買いに行ったクチだからな。」
太田も笑う。
「ヤマトに乗ったらそれこそ他人のふり。古代にとっちゃ面白くないはず
だよ。」
南部は“な”と太田を顔を見合った。
「で、誰かしらケンカを生活班にチクるんだよ。いまだにそれが誰かわから
ないんだけど。そうするとユキさんがすごい剣幕で来るわけ。で、いつもの
セリフ。“園児だって殴り合いしないわよ!園児以下だわ!”ってね。」
太田が思い出して笑う。
「あぁ、それ、イメージルーム以外でも聞いた事あるぞ?」
真田が少し考えてパッと閃く(やっぱり早い)
「食堂でも聞いたし展望室…格納庫でも聞いたな。」(真田)
「格納庫は砲術班と艦載機チームのイザコザだな。」(南部)
「それは参戦したんですか?」(太助)
「参加しない。」(南部)
「どうしてですか?」(太助)
「艦載機チームは一番危険だから。もしも…ケンカした後…飛んで行って
そのまま…って絶対ないとは言い切れないポジションだろ?一番神経を
すり減らしてる部署だからさ。…それに加藤と山本の最強コンビが最高に
良くてケンカも息があってたからそっちをみたかった、ってところかも。」
二度とみる事の出来ないコンビ…加藤と山本。山本は自分でリーダーになれるのにリーダーになる事を拒んでいた。加藤といつも一緒に会議にも参加して加藤の足りない部分をしっかり補っていた。
少ししんみりしてしまったのでここで太助が話題を変える。
「それにしても今日の森さん…いや、古代ユキさん、とってもキレイでした。
そのドレス姿に一言!」(太助)
「ドレス姿、ですか?メッチャきれいですよ。もともとキレイな人だから
何着ても似合っちゃって何を着せようか悩みましたよ。」
南部が腕組みをしてつぶやく。
「え?ドレスは南部さんの見立てですか?」(太助)
「あ、太助は知らないか。ユキさんのドレスはほとんど南部のいとこの
なんだよ。デザイナーが一人いてさ…ユキさんのイメージを大切にして
くれる人でねぇ。」
相原が嬉しそうに話す。
「仕事でフォーマルを着ないといけない時は須藤さんの、だもんんね。」
相原に褒められて少し嬉しそうな南部。
「へぇ…そうだったですか。本部でドレスを着て移動する森さんを見た事
ありますけど…本当にキレイですもんねぇ…」
坂巻がなぜかうっとりする。
「ちらっと見えるネックレスのダイヤがやたらでかいんだけどそれに負けて
ない所がすごい。」(相原)
「あ、あのネックレスは真田さんが加工したんですよ。」
ニコニコ聞いていた山崎が参戦してきた。
「そうなんですか?今日もすごい目立ってましたけど?」(太助)
「あれはイスカンダルのダイヤモンドだよ。守の荷物にたくさん入っていたか
らそれで作ってやったのさ。今は倉庫に眠っているが…ちょっと作りたい物
があって…それに使えるだろうと思って今研究中。あの石はユキだけじゃ
なくて俺達みんなの宝物、だからな。」
メインクルーの夢の中にサーシァが現れると枕元にダイヤモンドが転がっていた。
<叔父とユキさんをお願いします。>
必ず最後にそう言って消えて行った少女。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)6 作家名:kei