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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)6

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  「ありがとうございました。」(相原)

藤堂がマイクを南部に渡した。

  「大変貴重なお話をしていただきました。確かに古代くんはすごい人でしたが
   戦闘のない時は南部くんのおもちゃでした。私もヤマトに乗り込み戦闘の
   ない時は南部くんの補佐をしたものです。え~今回、二人の希望もあり
   堅苦しい挨拶はありません。…あ、藤堂長官の話は全く堅苦しくなかった
   です。(長官が笑いながら聞いている)ふたりの暴露話がしたい人は自由
   にマイクを持って話してください。そうそう、オチのない話はダメですよ~
   今日は結婚式ですから!それと今日は南部ホテルのシェフが腕を奮っての
   ごちそうが並びます。時間は無制限、明日の朝まで飲んで食べて楽しんで
   ください。」

相原がそう言うと“おぉ~”と歓声が上がった。

  「そして…ヤマトで亡くなった戦友を偲んでいただければもっと盛り上がると
   思います。決して湿っぽくならないでください。ヤマトのクルーはいつも
   明るく楽しく家族のように一緒でした。その気持ちを今日は思い出して
   飲みましょう!」

南部が藤堂から渡されたマイクを持って言った。






南部の声を皮切りに進とユキにビールを勧める人が次から次へとやってきた。

  「ははは、飲まされてる、飲まされてる!」

南部と相原は他人事のように見つめて笑っている。

  「太助、坂東、しっかり撮れよ!」

二人は撮影隊としてカメラを構えしっかりふたりを撮っている。太助と坂東は自分の声が入らないようにVサインを出した。



  「ふたりは…こんないい仲間に囲まれていたのね。」

ユキの母が父に声を掛けた。

  「あぁ…そうだったんだな。」

父も笑顔で答える。……そこへワインとグラスを持った藤堂が近付いてきた。

  「…初めまして…藤堂です。」

ユキの両親は突然藤堂に声を掛けられたので慌ててしまったが

  「すみません、驚かせてしまって…いえ、以前ユキが実家に行く時は必ず
   ワインを持って行くと言ってたから…」

と、言いながらふたりにグラスを渡すとワインを注いだ。

  「すみません…。」

父と母は何度かテレビで見た事のある“長官”が目の前にいる事に緊張していた。父は急いで近くにあった空いてるワイングラスを取って来ると藤堂に渡しワインボトルを受け取ると震える手でワインを注いだ。

  「ありがとうございます。」

藤堂がにこやかにお礼を言う。

  「やっと…式を挙げる事が出来ましたね…。沖田が一番心配してたふたりが
   落ち着く事が出来て…安心しているでしょう。」

艦長の沖田が亡くなった事はニュースで知っていた。

  「古代にしてみたら…父親と同じ存在でした。悩んだ時、何度も沖田に話
   掛けていた事でしょう…だからこそ…今回の戦いは無事戻って来てほしいと
   願っていましたが…残念な結果になり……。」

藤堂が声を詰まらせる。

  「実は…沖田は私と同期で親友でした。古代と島、そんな関係です。だから
   古代の気持ち…わかります。島は…陰でユキを支えていました。古代が
   いない時、一緒にいたり…ユキもいろいろありましたから…多分ご実家で
   仕事の話をする子じゃないと思いますが…(ふたりが頷く)私自身も
   彼女に大変助けられています。ユキじゃないと回らない仕事がたくさん
   あります。今後もどうか私の秘書をしてもらいたいので…」

ユキの母は藤堂が何を言いたいのか何となくわかったので

  「ご安心ください、いつでもユキのバックアップしますから。」(母)

藤堂はユキの母の言葉に苦笑いした。

  「二人には誰よりも幸せになってほしいと思う反面、軍を辞めないでほしい
   と言う私もいて…」(藤堂)
  「私が思うに…ユキは仕事をしていて進くんの傍にいる事がユキの幸せなんだ
   と思います。だから何があっても仕事は辞めないと思いますよ。ですが
   強情な娘なので私達を頼ってくれるか…」(母)

藤堂は心当たりがあるのか苦笑いした。

  「いい顔をしてますね。」

ユキの父が進の顔を見て言った。

  「うちに来る時はまだ緊張するのか…まぁ進くんが家族と言うものに不慣れ
   と言う部分が影響していると思うのですが…。進くんはまだ22歳なのに
   いろいろありすぎた。身の回りの不幸もそうだが自分の身を顧みず戦わな
   くてはいけなかった事…その時はわからなかったけど今は“進くんじゃな
   いと無理だった”って思います。そこに娘がいる事が今はよかったって
   思えます。私は息子が欲しかった…やっと息子が出来て…少し立派すぎる
   息子ですが…ユキに感謝、感謝ですね。」

藤堂とユキの両親と温かい目がふたりの注がれていた。