島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)6
「その時だったら勝負できたね。」
太田がメモに無いアドリブを南部に振る。
「バカ!お前、シナリオに無い事言わない!」
南部は焦ると人を“お前”と呼ぶ。
「南部、焦ると名前で呼ばなくなるからな。さて次、行ってみよう!」
ハメられて面白くなさそうな顔をする南部としてやったり顔の太田。
「それではヤマトに乗った後の第一印象は?」(太田)
「真っ先にすごい、だった。」
進がよどみなく答えた。
「そのココロは?」
南部が意味が分からず聞くと
「後から見たけどユキのレーダーは数値化されていないから正確に読むの、
結構難しいんだ。それなのに最初のミサイルの標準を合わせるのに正確な
数字を言った。もしあの時照準が合っていなかったらヤマトは飛び立って
数分で木端微塵になってた。」
進が余りに真面目に答えるので会場は静かになってしまった。
「古代くん、まじめに答えすぎ!」
ユキが助け舟を出すと会場に笑いが起きた。
「それではユキさんは?」(太田)
「そうねぇ…大丈夫?かなぁ」
進と違いつかみどころのない答えを出すユキに南部が突っ込む。
「そのココロは?」(南部)
「だって…いつでもどこでもゼロで飛んで行っちゃうでしょう?部下がいる
立場なのに…ひとりで行っちゃって大丈夫?とか…」(ユキ)
進が自分の命を顧みずすぐにゼロに乗って飛んで行ってしまったり反射衛星砲の爆破に向かったり…普段の進は“ヤマトの英雄古代進”という影も形も漂わせない程普通で戦闘指揮や訓練中と別の人格が宿っているのではないかと思うぐらい別人だ。てっきりその事を言ってると思っていたのでユキの答えを聞いて会場は静まり返ってしまった。
「ほら、ユキも真面目に答えすぎだろ?」
進がそう言うと
「みなさま、似た者夫婦の見本を見てる気がしませんか?」
太田の一言で笑いが起きた。
「それでは核心に迫りたいと思います。え~イスカンダルへの旅を一緒に行った
仲間はよく知っていると思いますが周りにはバレバレなのにお互いの気持ちは
まるっきりわからず状態だったふたり。お互いを異性として意識し始めたのは
いつ頃からでしょうか?」(太田)
少し悩むような感じの進に南部がチャチャを入れる
「古代は悩む必要ないだろ?」
「バカ!言葉を選んでるんだ!さっきっからビデオがしっかりまわってて…
後に残るから下手な事言えないだろ?」
素になっている進に会場は大笑い。ヤマトでの厳しい訓練を課しているのと同一人物に見えない…。
(ヤバイ…最初っから意識してた、なんて言えない…)
進が答えに困っていると相原が叫んだ
「最初から、でしょ?今更何を気にしてるんですか!島くんとけん制し合って
たでしょ?」
南部は相原のナイスアシストをしっかり受け止めた。
「そうだよ、バレバレだったんだからさぁ言っちゃえよ!」
南部も煽る。ユキだけがニコニコして進を見ていた。
「……そうだよ、最初からだよ。だけど最初ユキは真田さんと楽しそうに
話してたから…俺なんかガキ臭いし…と思って…だけど島にだけは抜け駆け
させないように、って思ってたよ。」
最初は小さい声だったけどだんだん大きくなってきて…
「しょうがないだろ?一目惚れだったんだから!!」
ユキも驚く衝撃発言が飛び出した。周りも“おぉ~”と驚きの声がもれる。
「さすがは戦闘班長!ズバっときましたねぇ!」
南部が嬉しそうだ。
「え~、突然名前の挙がった真田さん…(太田が真田を探す)いたいた…何を
そんな所で隠れてるんですか…ちょっと出て来てもらっていいですか?
(真田が二人の前に出る)古代くんがそんな風に想っていたそうですが…
何か身に覚えありますか?」(太田)
真田は自分が喋ると思ってなかったので南部からマイクを渡されて一瞬引いたが“お祝いなんで”と相原の呟きに乗る事にした。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)6 作家名:kei