島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)6
「え~真田です。今日はこんないい天気に恵まれてユキの晴れ姿を見れて
私も今までで一番幸せな日を過ごす事が出来ています。まだ本人におめでとう
としっかり言えてなかったのでこの場を借りて…(真田がユキの前に出て)
ユキ、おめでとう。これからがスタートだ。古代の事、頼むな。」
するとユキの瞳から涙が落ちると同時に真田に抱きついた。突然のユキの行動に周りは驚いたが真田は驚く様子もなくよしよしとユキをなだめるように“幸せになれよ”と言った。真田は進にユキを渡し言葉を続けた。
「ユキは私が保護者となって大学病院から預かった人材だった。いずれは
私の下から飛び立つ人材だった。だからユキに異性としての感情移入は
なかったが本当の妹のような存在で全てのものから守ってあげたい対象
だった。ユキは俺の事を父親だと思ってたらしいが…(ふたりで笑い合う)
だから誤解したんだろうな、古代も島も…(真田が進を見て)古代は…
守の弟だからか俺の弟みたいな感じだった。予備生の試験の申請も実は
俺がやった。(突然の告白に驚く進)守が古代の見舞いに行ってる時の
様子も全部聞いている。もちろん小学校の時の古代も知っている。だから
ヤマトに乗り込んだ時、初対面だったのに他人の様な気がしなかった…
生き別れた弟に逢えた、そんな感じだったんだ。妹のようなユキと弟のような
古代がいい感じな雰囲気になり始めた時はすごく嬉しかった。このまま
何事もなく地球に戻って幸せになってくれればいい、と…その日が一日も
はやく来る事を祈っていた…。ユキもその日を長く待っていたがそれは
ユキだけじゃなくてヤマトのメインクルーは誰もがその日が来るのを
待っていたんだ。……すまん、話が長くなってしまったな。まぁそんな訳で
誤解されてた、って事だ。あ、最後にもうひとつ、当時のユキの好みは
絶対古代じゃなくて島、だぞ!俺もなんで古代なんだ?って思ったうちの
一人だ。」
真田は爆弾発言を残してマイクを南部に返した。
「真田さん、貴重なお話をありがとうございました。……それでは重要な
“島”と言うキーワードを頂いた後でなんですが…ユキさん、どうぞ!」
太田がえらい嬉しそうだ。
「もう、真田さん、ったら!……え~私も一目ぼれ、って事にしてくれま
せんか?」
ユキが太田の顔を見たがその横で南部が首を振っている。
「古代は正直に話したんですから…ねぇ?(南部が進を見て頷く)古代じゃ
なくて島の話でもいいですよ!」
南部の言葉に進が
「おい、それじゃ主旨が違ってくるじゃないか!」
進が慌てる。
「だって太陽系出る頃には古代か、島か、って言われてたんですから!まぁ
古代は鈍いからまだ真田さんが気になっていた頃だと思いますが…。」
南部の言葉に進が頭にゲンコツを落す。会場は爆笑…その中でユキはどう答えようか悩んだ。
「古代くん、ごめんね。実は最初好きだったの古代くんじゃなくて島くん
だったの。」
再び爆弾発言!これには誰もが驚いて口を開けてユキを見ていた。
「でも…タイタンでの事や最後の地球との通信の時、第一艦橋で見る古代くん
の背中と違う古代くんの背中を見て放っておけない、って言うか支えて
あげたい、って思うようになって…。家族じゃなくても“あなたを心配
する人がいる”って知ってほしくて…それまでは何となく古代くんが私の事
好きなってくれますように、って思ってたけどビーメラー星で助けに来て
くれた時…私の運命の人は絶対この人なんだ、って思ったの。もう、いい?」
ユキが真っ赤な顔で答えた。
「いやぁ~貴重なお話ですねぇ!ビデオ係、撮れました?(太助と坂東が
Vサインを出す)これは今後、二人の危機の時に見たくない映像№1に
なる事でしょう。」
太田が笑う。
「ここに島がいたらどんな顔をするかな。」
南部が何気なく会場の遠くを見てつぶやいた。
「絶対見てますよ。テレサさんと一緒に。で、きっとコメントしたい事
あるでしょうけどテレサさんに止められてると思いますよ。」
相原が南部に言った。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)6 作家名:kei