島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)6
その後キワどいメインクルーならでは、の質問が続き会場は笑いが絶えなかった。所々島や加藤、山本の話も出て3人の家族も退屈する事無く披露宴(?)は続いた。
「え~それでは新婦の衣替えです。」(相原)
「違うよ、お色直しだよ。」(太田)
くだらない会話もフロアーに笑いが起きる。
「古代~ユキさん、連れてって~」
南部はいい感じで酔っている。それは珍しい光景で南部は絶対酔いつぶれる事はなかった。
「南部、大丈夫か?」
進が心配してそばに来ると
「悠輝が待ってるから早く行って~で、すぐに戻って来てね~」
南部が早く行け、と手で払う。進はユキの手を取って会場を出た。
「南部、大丈夫か?」(太田)
「ヘン、酔ったふりに決まってるだろ?」(南部)
ふたりが出た後しっかりする南部。
「あのふたりを控室に案内するのがイヤになった。当てられすぎだ!」
企画した本人が偉い怒りよう。
「南部も失恋したの認めなよ。」
太田が南部の肩をポンポン叩く。
「そうだよ、俺達判ってるから…。」
相原の優しい声に南部の眼に涙が溜まる。
「違うよ…違う。嬉しいんだけど…終わるんだ、って思ったら急に寂しく
なっちゃって…。」
南部は常にふたりをバックアップしてきた。ユキに行く場所がない時は実家のホテルを案内し進が窮地の時は実家のエアカーを手配したり…父親と一緒に参加するパーティの時も付かず離れずの距離でユキの近くにいたり…と
「バカだなぁ、なに泣いてんだよ。まだまだこれからあの二人のフォローは
必要だぜ?」
太田が言う。
「婚約した、って言うのにユキさんに求婚する連中は絶えなかった。古代が
宇宙勤務を狙ってユキさんを我がモノにしよう、ってヤツ絶対いるって。
その魔の手からユキさんを守らなきゃ!」
太田が正義感いっぱいに言ったが
「……それも大事だけど南部もいい人見つけりゃいいんだよ。」
と言った。
「それがやっぱり“南部”の名前に釣られる女性が多くてねぇ…」
財閥の息子ならではの悩み。
「きっと政略結婚させられて…ですよ。相原はいいなぁ…もう、決まり?」
力のない声だったけど南部が相原に聞いた。
「え?僕??」
突然話を振られてどう答えていいかわからない相原。
「晶子さんはまだ…軍の仕事頑張りたいって言ってますからまだまだ…
考えられませんよ。」(相原)
「なぁんだ…でも古代の次は相原だな。……よし。」
南部の眼に力が宿る。次のおもちゃをロックオンしたからだ。
「よし、今日はトコトン飲むし喰うぞ!」
南部の変わり様に太田も相原も苦笑いするしかなかった。
「ユキ?」
進の待つ部屋にユキが別のドレスを着て入ってきた。もちろん前撮りしてるから見るのは二度目。
「きれいだ…。」
進がため息をつく。海と空の境目のない風景のような…まるでイスカンダルを思い出す色のドレスを身にまとい進の前に現れた。先ほどと同じ青いバラがよく似合っている。胸元には進が贈った真珠のネックレスがユキのデコルテを美しく見せている。
「…ありがとう。」
悠輝が満足そうに二人を見つめている。
「須藤さん、ぜひ、フロアーにご一緒してください。」
進が言うとユキも“ぜひ…”と言った。
「でもまだあと一着残っていますし…。」
悠輝が遠慮しようとそう言ったが
「メイクの方も…立食で落ち着かないかもしれませんが食事はたくさん出る
みたいなので…。」
ユキが進を見て“ねっ”と声を掛ける。悠輝とメイクさんはユキの美しさに釣られてつい“はい”と言ってしまった。
「よかった!じゃぁ…ご一緒しましょ。」
ユキが嬉しそうに控え室を出た。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)6 作家名:kei