島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)6
「ユキさん、そろそろ…最後のお色直しお願いします。」
南部がユキの横へ来て声を掛けた。それとなく進を探しユキをエスコートするよう伝える。
「え~それではご両人がお色直しに出られますよぉ~」
出来上がってるクルーも相原の声に“行ってらっしゃい!”“ご両人!”と二人を送り出す。先に悠輝とメイクさんが控室に戻りスタンバイしている。
「とても好評でしたね。離れた所から見てましたが…とてもキレイでした。
さて…最後のドレスですね。…おっと、お祝い事に“最後”は良くない
言葉でした…失礼しました。さぁ先に着替えてきてください。向こうの
部屋に用意して置きましたから。」(悠輝)
「ありがとうございます。」
ユキはネックレスを外しながら別の部屋に入った。
「お待たせしました。」
悠輝が進を控室に招き入れた。
「古代くん、どう?」
ユキの3回目のお色直しのドレスは紅梅を思わせるような色のドレスだった。髪に挿しているバラも真っ赤なバラと白いバラに変えてブーケも赤と白のバラにしてもらっていた。
「うん、キレイだよ…。」
進が瞬きを忘れたかのようにユキを見つめてつぶやくように言う。その様子を悠輝とメイクさんは笑顔で見つめていた。
「さぁさ、今日の仕上げです。どうぞ楽しんできてください。あ、そうそう、
ドレスを着替えたくなったらいつでもこの部屋にお戻りください。Keyを
預けておきます。(進に渡す)奥の部屋にワンピース置いて帰りますので
そちらに着替えてください。ラフなワンピースですがそれ来てもう一度
フロアーに戻られたらどうですか?ドレスじゃ窮屈で食べたいものも
口に入らないでしょう?」
悠輝がユキのブーケの形を整えながら言った。花屋はすでに帰っている。
「そう言えば…。」
ユキはドレスを汚したら…ばかりを考えてほとんど食べていなかった事に気付いた。
「よく飲んでたけどな。」
進がクスクス笑う。
「だって手が空いてると誰かしら持ってくるんですもの。」
基本、ユキもアルコールには強い。
「まぁお祝いですからね。誰もが花嫁と飲みたいものです。ましてこんなに
美しい方が自分のグラスを取ってくれたら嬉しいはずです。」
悠輝が水差しからグラスに水を移し替えてユキに渡した。
「ありがとうございます。」
ユキは素直にお水を受け取ると半分ほど飲んだ。
「行ってらっしゃい。楽しんできてくださいね。」(悠輝)
「須藤さんは?」(進)
「後から少し顔を出して…ボチボチ帰りますよ。」
悠輝はそう言ってメイクさんと顔を見合わせた。
「わかりました。楽しんでください。メイクさんもありがとうございました。
人にメイクされることなんてなかったからドキドキしちゃいました。前撮り
の日と今日とお手数おかけしてすみませんでした。」
ユキが二人の頭を下げる。
「いえいえ久々にいい仕事をしたと思いました。どうぞお幸せに。」
メイクさんもにっこり笑う。ふたりはもう一度礼をすると控室を出て行った。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)6 作家名:kei