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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)7

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  「気持ち良かった…」

ユキが部屋に戻ると扉が完全に閉まらないようにドアの所に紙がはさんであった。

  「ロックされないようにしたのね。賢い!」

ユキは独り言をいいながら“ただいま”と言って部屋に入った。すると進が籐で編まれたロッキングチェアに座りながら転寝をしていた。

  (運転もしてたし…のぼせちゃったし。疲れたわよね…)

ユキは奥の部屋にふすまがあったのを思い出し何か掛けるものがないか、と思い開けた。押入れには布団と毛布があったので毛布を一枚持ってそっと進に掛けた。

  (お願い…古代くんを解放してあげて…充分苦しんだの…これ以上この人を
   苦しめないで…私が古代くんの苦しみを変わってあげてもいいから!)

ユキはそっと涙を拭いた









  「気持ち良かった~」

30分ほどして進が起きた。食事まであと30分ほど。ユキは端末を覗いている。

  「あ、起きた?」(ユキ)

進が立ち上がるとかけていた毛布が落ちた。

  「ユキが掛けてくれたの?ありがと。」

進の優しいキスがほほに落ちてきた。

  「湯冷めして風邪引いちゃうわよ?」

白血球の数が増えすぎると進は入院になってしまう。ユキは進の健康管理に気を配っていた。

  「…そうでした…今風邪引いたら大変なんだよな?」(進)
  「そう言う事です。お分かりならよろしい!」

進はユキに言われると何も言い返せない。

  「さて…お食事来たらジャマね。片付けましょ。」

ユキは端末を閉じた。

  「仕事?」(進)
  「いいえ、明日どこか行くのに近くに何かあるかしら?って調べてたの。
   でも何もないわ。」

ユキが柔らかく笑う。

  「離島に行けるかな?」(進)
  「あ、それいいわね。夕食後調べましょう。」

しばらくすると夕食が部屋に運ばれてきた。










  「やっぱり和食っていいわね。」

夕食を終えてお茶を飲みながらユキが言う。

  「そうだね。」

進もそう言ってお茶をすすった。

  「さて…嫌だと思いますが…まず検査。」

ユキが立ちあがってバッグから検査のキッドを持ってきた。

  「やっぱり持ってきてたんだ」(進)
  「看護士ですから。」(ユキ)
  「点滴も?」(進)
  「看護士ですから。」

ユキはそう言いながら進の指先に少し針を刺してキッドに血を吸わせる。結果が出る数分の間に点滴の用意をする。

  「さて…」

ユキがキッドの数値を確かめると数値は落ち着いていた。

  「海が古代くんの体調を整えるのかしら?」

ユキはそう言いながら進の腕を軽くしばり血管を探す。

  「ちくっとするわよ。」

ユキの点滴はいつも的確で進の欠陥を外した事などない。

  「ユキの点滴、全然痛くないよ。」(進)
  「そう?よかった。」

ふたりの部屋は窓を開けていたので少しだけ海の音がした。

  「波の音しか聞こえないわね。」(ユキ)
  「静かだな…でも波の音がするから地上に戻って来たんだ、って実感する。
   やっぱり地下の空気はこう、淀んだ感じがするし…」(進)
  「そうね。星もきれいだし…。」(ユキ)
  「こういうところで暮らしたら病気もふっとぶかな。」

進が点滴を見つめながらつぶやく。

  「古代くん…」(ユキ)

進は目を閉じた。

  「軍…辞めてもいいのよ?」

ユキの言葉に進は驚いて眼を開いた。

  「大学に行って好きな事勉強してもいいと思うの。少し自由になったら?」

ユキが進を心配そうに眺める。

  「ユキ…」

進の脳裏に浮かぶのは三浦の豊かな自然…目の前は海、裏は山。自然保護区でもあったため研究者がよく訪れる場所でもあった。



進は少し考えた後静かに首を振った。

  「なぜ?」(ユキ)
  「島が命がけで救った地球を守りたい、って思うんだ。」(進)
  「古代くん…」(ユキ)
  「俺一人でできる事じゃないけど…」(進)
  「そうね…古代くんから宇宙を取り上げちゃダメよね。」

ユキが静かに笑う。

  「ユキ…」(進)
  「ずっと地球にいる事なんてできないはず…だって宇宙があなたを呼ぶはず
   だもの。」(ユキ)

進はユキの言葉に驚いた。

  「宇宙が俺を呼ぶ?」(ユキ)
  「そう…私にはわかる…古代くんに地球は窮屈な場所なのよ。」

点滴は終わりかけていた。

  「私は大丈夫よ…古代くんが宇宙に行っても…うんと長く宇宙に行っても
   心はそばにいるわ。私もあなたも一人じゃない…でしょう?」

ユキの微笑みは進の心を癒す。点滴で動けない進はそばに座るユキのほほをそっと撫でた。

  「私はあなたの帰ってくる場所…いつまでも待ってるから…」

ふたりの唇はそっと重なった。