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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)7

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翌日ふたりは定期船に乗って近くの島に向かった。静かに凪いでいる海を防波堤から眺めたり浜辺で遊ぶ子供たちを眺めていた。さすがに誰もヤマトのクルーと気付かずふたりは久しぶりに穏やかな日々を過ごしていた。

  「観光ですか?」

島人の男性に声を掛けられた。

  「えぇ。」

ユキが答える。

  「こんな何もない所へ?」

島人は驚いている。

  「何もない所へ行きたかったんです。」

進が答える。

  「トウキョウからお越しですか?」(島人)
  「そうです。」(進)
  「人がたくさんいるんでしょうね。」(島人)
  「たくさんいます。ステーションにいるとどこからこれだけの人が出てきた
   のかと思うほど、ですよ。」

進が笑いながら答える。

  「だから…(ここが)落ち着くのかもしれませんね。」

進が深呼吸をした。

  「ここが、ですか?」(島人)
  「えぇ…夜は星がきれいに見えて聞こえてくるのは波の音だけ…静かで…」

進が昨夜の事を思いだした。

  「確かに…何もないですから…でも私もここから見る星は本当にすごいと
   思います。子供の頃から変わらない風景ですから…何度ももうダメかと
   思いましたが…」

島の男性はにっこり笑いながらこう続けた。
 
  「ヤマトのおかげでこうしてここにいられます。いつか…また以前のように
   海の魚を取って生計を立てられれば、って考えています。アクエリアスの
   おかげで真水に近かった海がしっかりとした海水に戻ったと聞きました。
   星間戦争のおかげで大変な目に遭って来ましたが諦めずに戦ってくれた
   おかげで私達も海を取り戻す事が出来ました。どう、感謝の気持ちを
   伝えたらいいのか…考えてしまいます。」

進とユキはまさかヤマト、が出てくると思わなかったので驚いてしまった。

  「ここは古いヤマトが沈んだ海域に近い島です。だからかヤマトが復活して
   地球を救った事が誇らしくて…あ、自分が戦ったわけじゃないのに…、って
   思っていませんか?(二人の顔を覗きこむように見る)ヤマトは地球の…
   日本人の誇りです。」

胸を張る島の人に進はにっこり笑った。

  「何もない島ですがどうぞゆっくりして行って下さい。」

島の人は笑顔で手を振ると二人の元から去って行った。




  「以前は漁師だったのかしら?」

ユキは海の仕事をしていた、と言っていたのことを思い出した。

  「そうなのかもしれないな。海に囲まれているから…海の魚が戻るのは
   いつだろうな…。」

二人は再び海を眺めた。






島の人々は二人を見ると観光客が珍しいのか声を掛けてくれた。そして誰もが大和の話をしてくれた。




  「気持ちのいい人ばかりだったわね。」

帰りの定期便でユキが進に言った。

  「そうだな…でも…」

進が語尾を濁す。

  「なぁに?どうしたの?」(ユキ)

進は島の男性がユキの顔を見て嬉しそうに話すをの複雑な気持ちで見ていた。“ユキは俺のモノだ!”と言いたくなるのを抑えるのに必死だった。

  「いや…なんでもない。」

進がすこし拗ねたような顔をしている。

  「へんな古代くん!」

ユキの笑顔が夕日と重なって眩しかった。







  「ユキ、一緒に入る?」

ホテルに戻ってきた進は部屋の温泉にユキを誘った。

  「一緒に??」

部屋のお風呂もどこかへ行く時も一緒にシャワーを浴びた事もない…
ユキが恥ずかしがっていると

  「今更照れる事ないだろ?ユキの事ならすみからすみ…」

進が話しているのにどこからともなくクッションが飛んできて進の顔面に直撃した。

  「痛ってぇ…コントロールすっげぇいいし…」

クッションの当たった鼻を進が擦る。

  「全く!女の子は何でも初めて、を大切にするのよ?それなのに…!」

ユキが真っ赤になって抗議する。

  「ユキが抗議したって全然怖くないよ。」

進がそう言ってユキを抱きしめる。ユキは突然の事で慌てて逃れようとするが鍛え上げた進から逃れられるわけがない。抱きしめられてキスをされてそのまま抱えられお風呂場へ消えて行った。