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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)7

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  「沖田…見たか?」

藤堂は妻と晶子を連れて英雄の丘に来ていた。頭上には星々が輝いていた。昼間は真っ赤なじゅうたんが敷かれここでユキのウェディングドレス姿を見た。藤堂はまるで自分の孫が嫁ぐような、そんな感覚だった。

  「沖田の子供たちが幸せになれるよう、見守ってくれ。」

藤堂が沖田の銅像の足元にユキのブーケと同じ青いバラの花束を置いた。

  「島…加藤、山本…ふたりを見たか?きみ達の死を乗り越えてあのふたりは
   幸せになろうとしている。沖田と一緒に見守ってくれな。」

島もレリーフはこれから製作される予定だ。藤堂はここに置かれるレリーフが増える事が残念でならない。

  「私は…たくさんの戦友を見送ってきた。沖田が復活して意識がはっきりした
   時、これから長い時間を共に過ごそうと思ったが…それも叶わず仕舞い…
   もう、懐かしい話をできる人は佐渡さんくらいになってしまった…沖田…
   お前がヤマトをくれ、と言ったな。本当に…乗って逝ってしまうとは
   思わなかった…そこに守はいるか?守に伝えてくれ…弟にお前の二の舞は
   させない、と。」

藤堂の眼から涙が落ちた。











進とユキはほんの少しの睡眠をとった後新婚旅行へ旅立った。メインクルーは最後までフロアーに残りみんなが帰った後寮に戻って行った。ふたりの結婚式は誰もが新しい一歩を踏み出すためのきっかけだったのかもしれない。

<女神1>
  「入るぞ。」

進は島の部屋にいた。いつものようにきれいで何もない部屋。クローゼットの中もきちんと整頓されている。進は新婚旅行から戻ってすぐに島の部屋にやってきた。ユキはお土産の整理をしてるから行ってきて、と進を送り出した。カギは藤堂の許可をもらい寮母さんに合鍵をもらって入った。

  「生活感0だな。」

進は収納に入っている物すべてを出した。普段着ていた服、並んだチップが出てきた。

  「少ないな…」

まるで自分に何かがあったら手を煩わせないようにしていたかのようだ。進は突然虚無感に襲われた。前にも同じような感覚に陥った事がある…



両親を失った時…守が死んだと聞かされた時…そう、家族がいなくなったと気付かされた時と同じ感覚…そう、自覚した瞬間自分の足元が真っ暗になり沼地のように足を取られ引きずり込まれた。

  {うあぁっ}

そこには無数の手が伸び進を引きずり込もうとしている。

  {助けてくれ!}

進は声を出そうとするが声がでない。足は沼地にはまり無数の手が進の身体をとらえ逃がさないようしっかり捉えている。

  ≪苦しいの…痛いの…ここはイヤ…助けて!≫
  ≪お前だけが助かってもいいのか?≫
  ≪熱い…熱い…身体が燃えていく…≫

無数の手に無数の意識…進は島の部屋で意識を失った。