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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)7

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  (忙しかったからなぁ…でも旅行先で検査してた時は何ともなかったのに…
   自分だけが幸せになる事に抵抗があるのかしら…古代くんはまだ自分自身を
   許していない、って事?)

ユキは静かに眠る進の横で静かにため息をつく。昨日は普通に食事をして後3日残った有休をどう消化するか相談してて…

  (地下都市の島くんの部屋は引き上げたけど地上はまだ手付かずだから俺が
   整理してくる、って…。すぐ長官に連絡を取って合鍵の手配したのよね。)

少し汗ばむ進の額を冷たいタオルでふく。熱はないようだ。

  (あの時古代くんは13歳だった。うなされる夢の中でも中学生、って言った…
   またあの時に戻ってしまったの?)

うなされる進を見て自分の心も締め付けられるぐらい辛かった。13歳で見てしまった地獄絵図…真田は心にふたをしていたんだろうと言っていたが見ないようにしても意識しなくてもどうしても目に入る光景を否定することはできない…

  (私は古代君を救えるのかしら…)

ユキは不安になった。







  「ユキ…」

進の横で椅子に座りながら居眠りをするユキを進が起こす。

  「ユキ、風邪引くよ。なにか掛けないと…」

ユキは目をこすりながら起きた。

  「寝ちゃったのね…首が痛い…」

凝った首をコキコキしながらユキが伸びをした。

  「どう?気分は…」(ユキ)
  「うん、大分いい…」(進)
  「そう…食欲は?」(ユキ)
  「そう言えば朝食べてから何も食べてないな。」

時間を見ると午後4時。

  「もうすぐ夕食が運ばれてくるわ。多分かなり軽いものが出るから足りなければ
   私買ってくるから…。ちなみに何が食べたい?」(ユキ)
  「……」

進は何も答えない。

  「多分胃とか腸とかに問題があるわけじゃないからなんでもいいわよ。」(ユキ)

進はしばらく考えて

  「家に帰りたい。」

とポソっとつぶやいた。まるで小さな子が迷子になって家に帰りたい、と言っているような…そんな感じだった。ユキは少し困った顔をして苦笑いしながら立ち上がる。

  「ふふふ、一家の大黒柱が園児みたいなこと言って…ちょっと待っててね。」

ユキは進を一人にするのが少し不安だったが進の部屋を出てモリタが詰めている医師の詰所に向かった。







  「すみません…」

ノックして扉を少し開けるとそこにモリタがお茶を持って談笑していた。

  「あぁ森さん…どうしました?」

モリタが部屋を出て隣の談話室に案内してくれた。

  「すみません。古代君のことで…」(ユキ)
  「どうですか?」(モリタ)
  「えぇ、先ほど目が覚めて…熱はないようです。で、本人家に帰りたいと…」

ユキが申し訳なさそうに言う。

  「多分、うんと前に相談した時と同じ状態だと思うんです。まだ軍の状態が
   落ち着かないので有休を消化して一緒にいてあげようと思います。」

モリタは進とユキが結婚したことを思い出した。

  「そうだね、結婚したんだったね。おめでとう…。そうか、もう森さんじゃ
   ないんだね。テレビで見たよ、とてもいい式だったね。」

式の様子だけテレビのニュースで流れていた。何度も地球を救った英雄同士の英雄の丘での挙式…地上に戻ったばかりだったのでそれは大々的なニュースになった。モリタが思い出しながら嬉しそうに言う。

  「ありがとうございます。でも実感がなくて…今まで通りで呼び方はいいですわ。
   それで…」(ユキ)
  「精神的なこと…かな?」(モリタ)
  「おそらく…だから家に帰ってゆっくりさせてあげたいんです。」(ユキ)
  「そうだね、その方がいいかもしれないね。」

モリタはすんなり答えを出してくれた。

  「やっぱり自分が幸せになる事に抵抗があるのかな?」

モリタは進が助かったときの事を思い出していた。

  「そうだと思います。今回一番の親友だった島くんが亡くなりました。
   そのことで自分を責めているのもあると思います。」(ユキ)
  「時間が解決してくれる…か…。」(モリタ)
  「はい。」(ユキ)
  「いいよ、私が許可するよ。」(モリタ)
  「先生…」(ユキ)
  「今は森さんが進くんの特効薬だろうから…いや、今も…かな。あの時も
   森さんがいなければどうなっていたか…。」

モリタがしみじみ言う。

  「進くんは自分の事を顧みないでしょう?(ユキが頷く)もう少し自分を大切
   に思えればこんな事、ないと思うんだけどね。」

モリタの言っていることは当然の事だった。自分の存在価値を認めたくない意識が進の心の中にある。

  「私から事務局へ伝えておくからそのまま帰っていいよ。請求書も秘書室宛てに
   送っておくよ。」

モリタはできるだけ手を煩わせる事を避けてくれる。