島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)7
「宮崎と鹿児島…」
鹿児島にはヤマト専用坊が岬秘密ドッグがあったところだ。ユキは南部のメールを見ていた。進はせっせと朝食…いろいろあった(してた)からブランチの準備をしていた。コーヒーのいい香りがしてきた。そろそろ準備ができただろうか…頃合いを見計らいユキが進に声を掛けた。
「ねぇ古代くん、有給延長したからプチ旅行、いかない?」
ユキが端末を見ながらキッチンにいる進に声をかけた。
「鹿児島…指宿の温泉最近復活したんですって。」
進が朝食のパンとコーヒーを持ってソファーのテーブルに置いた。
「どこ?」
進が端末を覗き込もむ。
「へぇ…九州の端だぁ」(進)
「そう、どう?私、小学校の時九州にいたのよ。佐賀だから反対側だけど。」
そう、本来ならユキは九州の訓練学校に入る予定だった。場所からいけば佐世保が近かったのかもしれない。
「パパが転勤族だったから…一か所にあまりいなかったのよ。だから友達も
いなかった…ヤマトに乗って友達ができた…」
進とユキの視線の先には坊が岬の文字…
「一番最初の時、一緒に乗ってたんだもんな…島と沖田艦長と…。」
進がつぶやくように言う。
「そうね…4年前、だわ。」
目の前の食事の事も忘れふたりは目を合わせるとどちらからともなく唇を寄せる…とユキの手がマグカップに当たりコーヒーをこぼしそうになった。
「コーヒーが冷める、って抵抗してるみたいだな。食べてから決めようか。」
ユキも立ち上がりキッチンに出来上がっているブランチを進と一緒に運んだ。
「用意できたか?」(進)
宇宙戦士の決断と準備は早い。
「OKよ。」
ふたりともラフなスタイルに身を包み出かけた。
「飛行機は?」(進)
「後1時間でフライト。大丈夫よ、間に合うわ。」
ユキが携帯の時計で確認する。進はご機嫌だ。ユキはそんな間も進の事を観察する。いつもと変わったところはないか…思いつめた表情はないか…。
ブランチを食べてからフライトまで2時間。突発にも程がある…ユキは飛行機に乗ると隣に座る進を見てクスっと笑った。
「なに?」(進)
「時間を見たら2時間前まで食事タイムだったのに、って思ったの。とっても
せっかち旅行みたい、って思って…。」
ユキの言葉に進も笑う。……がこっそり耳元で
「本当は少しでも長くベッドにいたかったんだけどね。」
と囁く。ユキはドキっとした。いつからこんな事が言える人になったんだろう…
「ばか。」
ユキは真っ赤な顔をした。進はそっとユキの手を握る。
「ばかで結構。しょうがないだろ?そばにいる時はいつだってユキの事を
抱きたい、って思ってるんだから…」(進)
「古代くん…」
ユキが切なそうに進を見つめる
「子供だってできないように注意してきたけどもう、その必要もないし…
出来れば一日でも早く子供がほしい、って思ってる。」
「でも・・」(ユキ)
「判ってるよ、こればかりは授かりモンだからな。でも努力は惜しみません!」
飛行機のビジネスクラスの広いシートなのに身を寄せ合うように話す二人に添乗員もどう声を掛けたらいいか迷っている感じだ。ユキがそれに気付いた。機内サービスが始まっていたのだ。
「すみません。」
進は出されたおしぼりを受け取った。
九州まではアッと言う間だ。
軍用機だともっと早いが民間機だから少し時間がかかる。ふたりはほんの少しの時間を睡眠に当てた。
<間もなく鹿児島空港です。シートベルトをご確認ください>
ふたりの睡眠を遮るようにコールが聞こえた。
「ユキ、帰りは船にしようか。」(進)
「それってとても贅沢よ?」(ユキ)
「いいじゃないか。たまには地球の海、って言うのも。普段は星の海、だろ?」
ユキは進の提案を飲もうと思った。
鹿児島空港から坊が岬までレンタカーを借りる事にした。誰にも邪魔されずゆっくりまわりたい、と思ったからだ。海沿いを走るとユキが窓を開けた。
「潮の香りがするわ。」
進も窓を開ける。ユキが少し伸びた髪をそっと抑える。
「気持ちいいわね。」(ユキ)
「あぁ。」
進の言葉と表情は裏腹で少し硬い顔をしていた。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)7 作家名:kei