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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)7

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  「この海の南の先で戦艦大和は沈んだのよね…まさか宇宙のアクエリアスの
   海で再び眠りにつくなんて想像しなかったでしょうね。」

二人は坊が岬に来ていた。地上に戻ったばかりという事もあって人影はない。ユキがはるか彼方遠く、大和が沈んだ海を見つめてつぶやいた。

  「そうだな…」

進も海を眺めていたが頭の中は無数の手に引きずり込まれる夢の事を考えていた。ずっと前に見た事のある夢…

  「俺は…復讐するためにヤマトに乗った。」(進)
  「うん。」(ユキ)
  「ガミラスを滅亡させた。」(進)
  「それは仕方のない事だわ。」(ユキ)
  「それからもいくつもの星を滅亡に追いやった。」(進)
  「抵抗しなければ地球に人類は生息していないのよ?」(ユキ)
  「ディンギルの少年も救えなかった…仲間もたくさん失った。(進)
  「……」
  「でも誰もが俺に幸せになれ、って言った。ユキを幸せにしろ、って」(進)

進がユキを見つめた。

  「俺はユキを幸せにできるのか?」(進)

ユキはそっと首を振りながら進の手を取った。

  「前にも言ったはず…私は古代くんに幸せにしてもらおうと思ってない。
   ふたりで幸せになるの、って。古代くんが苦しんでたら私も苦しいの。
   だから一人で抱え込まないで?」

ユキの手の力が強くなった。

  「古代くん、前にもうなされていたわ。」

進がハッとした顔をした。

  「イスカンダルから帰って来て…私が南部くんのホテルにお世話になってる
   頃…とても苦しそうだった。毎晩のようにうなされて…でもうなされてる
   前日はとても楽しそうに笑ってるの。だから思った…古代くんは無意識に
   自分が幸せになる事に抵抗を感じてるんだ、って。」

進は黙ってユキの告白を聞いていた。

  「あの時は私もいろいろあって余裕がなくて…」

進は思い出した。ユキが攫われてナゴヤシティまで奪還しに行った事を…

  「身を委ねる人がいてくれた…古代くんが私を助けてくれた。もっと早く
   それに気付いていたら古代くんの事、傷つけずに済んだのに、って今なら
   わかる。」

ユキは自分が臆病でなかなか進に全てを任せる事ができなかった事を悔いていた。進自身もユキを守ってやれず歯痒い思いをし、やはりユキを傷つけてはいけない、と、辛い過去を思い出させてはいけないと一歩を踏み出せなかった事を思いだした。

  「人間、後悔する生きモノなんだわ。でも何もしないで後悔するなら実行して
   後悔した方が絶対にいいはず。古代くんのその夢もいつかきっと消えるわ。
   ううん、絶対私が消して見せる!」

ユキは進の手を離すとギュッと腕を抱きしめた。

  「ね?」

下から覗き込むように小首を傾げながら進の顔を見るユキが余りにもかわいらしすぎて進は自分の腕にしがみつくユキを胸に抱いた。進は表で決して大胆な行動に出ないのでユキは驚いたがほんの数時間前までこの広く厚い胸に抱かれていた事を思い出しほっそりしたユキは進の腕の中に収まった。