【腐】 愚問 【亜種】
赤い髪、赤い瞳。正規品ならば青であるはずの色を持たないヒト型は、不良品として処分されるはずだった。目覚めるはずのない彼は目覚め、あるはずのない意志を持って、処分場を抜け出した。まるで落とした針に偶然糸が通るような奇跡を積み重ね、町をさまよっていたアカイトは、まだ幼い主人と出会い、父親との暮らしに迎え入れられた。
貧しいが暮らしていけない訳ではないと、父親はなけなしの金でアカイトに時間を与え、アカイトは恩に報いようと、父娘を支える。寄り添うような暮らしに転機が訪れたのは、マスターの何気ない一言だった。
『ねえ、アカイト。これ、何て書いてあるの?』
本好きなマスターの為に、アカイトが拾ってきた本。その中の一冊は、意味不明な列が並んでいるだけだった。最初は誰かの落書き帳だろうと放置していたが、ある日、それが意味のある言葉であることを、アカイトは唐突に理解した。
それは、時間を消費して、魔法のような効果を生み出す方法。
アカイトは、試行錯誤しながらその方法を身につけた。宙に浮くのに五分、一瞬で遠くまで移動するのに一時間。アカイトは夢中になって本を読みふけり、マスターと共に様々な方法を試し、そして、見落としていたのだ。
父親の、変化を。
酒の空き瓶が増えたことも。父親から渡される金が減っていくのも。不審な人影がうろついていることも。
マスターはまだ幼く、アカイトは世間について無知だった。
そして、父親は、貧しい暮らしを耐え抜くには、弱すぎたのだ。
作品名:【腐】 愚問 【亜種】 作家名:シャオ