【腐】 愚問 【亜種】
翌日。
アカイトは、苛々と舌打ちしながら足早に歩く。その後ろをぴったりとついていく、黒いコートの男。
くそうぜぇ。
朝から影のように張り付くカイトに邪魔されて、全く時間を奪えなかった。自分の「時計」も容赦なく数字を減らしていき、そろそろ残り二時間を切るだろう。
アカイトは急に立ち止まると、勢いよく振り向いた。
「うおっ!?」
至近距離にあったカイトの顔に思わずのけぞり、二・三歩下がる。
「何してんだよ!」
「お前が立ち止まるからだ」
「距離くらい開けろ馬鹿!」
アカイトは乱暴に髪をかき乱しながら、
「・・・・・・何のつもりだ」
「お前の気が変わるのを待っている」
「ああ!?」
「私以外に触れるな」
青い目に見つめられ、アカイトは顔を逸らした。そっと袖を捲れば、表示されている時間は残り一時間半。
「・・・・・・邪魔すんなよ。殺す気か」
「時間なら、私が与えよう」
「いらねえよ! ついてくんな!」
アカイトはそう叫ぶと、瞬時に遠距離移動した。一時間の消費は痛いが、とにかくカイトを巻く必要がある。
調子が狂う・・・・・・!
端整な顔立ちと、心地よく響く声と。何より、あの澄んだ瞳に見つめられると、言葉が出なくなった。
作品名:【腐】 愚問 【亜種】 作家名:シャオ