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【腐】 愚問 【亜種】

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残り時間二十分。
アカイトは、前を歩くピンク髪の女に狙いを定める。髪の一本でも触れられれば、それで十分。
細い路地にはいくつもの脇道があり、逸れられたらやっかいだ。他に人影はなく、迷いなく歩く様子からして、マスターの元へと向かう途中なのだろう。

だったら、多めに分けてもらってもいいよな。

アカイトは、足早に女の背後へと近づく。追い抜きざまに髪に触れようと、指先を伸ばした。

十五分消費して、相手の時間を・・・・・・

いきなり横から手を取られ、そのまま脇道に引きずり込まれる。両手を掴まれ、壁に押しつけられた。

「ふぁっ!?」
「私以外に触れるなと言っただろう」

カイトの不機嫌な声を遮って、アカイトは「ふざけんな!」と怒鳴る。

「時間がねーんだよ! 離せ!!」
「そのようだな」

捲れあがった袖口から覗く「時計」は、残り時間が五分もないことを表示していた。

「どうする? このまま時間切れを待つか?」
「なっ!」
「こうしている間にも、時間は減っていくが」

カイトは、ぐいっと腕を引いて、アカイトにも表示が見える位置に持ってくる。残り二分、アカイトの背に冷たい汗が伝った。

「二分など、あっという間だな」

冷静なカイトの声。じりじりと減っていく数字。もがいても、両手の戒めは振り解けそうにない。

「後、一分」

カイトの宣告に、アカイトは体ごとぶつかるようにして、唇を重ね合わせた。

「・・・・・・んっ・・・・・・」

背中に腕を回され、抱き締められる。むさぼるように舌先を絡め合い、吐息を漏らした。

「はっ・・・・・・んんっ・・・・・・のっ! いい加減離せ!!」

渾身の力でカイトを引き剥がす。
不服そうな相手に背を向けて、アカイトは袖で口元をこすりながら、「時計」を確認した。

「二十四時間しか増えてねえぞ! どういうことだ!!」

振り向いて怒鳴るアカイトに、カイトは首を傾げて、

「無駄な時間は持たない主義なんだろう?」
「ふざけんな!!」

荒だたしく立ち去ろうとするアカイトの背中に、カイトの声が響く。

「何処へ行く?」

アカイトは振り返ってカイトを睨むと、

「俺を所有していいのは、マスターだけだ」

そう言い残して、姿を消した。


作品名:【腐】 愚問 【亜種】 作家名:シャオ