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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)8

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  「あら?」

玄関の扉の鍵がかかっていない。中を見ると電気は点いていないようだがまだ日が高いので部屋の中は明るかった。……がその静けさが部屋の明るさを寒々しく感じさせている。

  「古代くん?帰ってるの?」

静かにパンプスを脱いで部屋に上がるとリビングのカウンターに一枚の紙が置いてあった。何やら数字が刻まれている。ユキはその紙を手に取った。









  「古代くん、ここにいたんだ。」

家族寮の部屋はひろい。4LDKだから進の部屋もある。もちろん、ユキの部屋も。進は一番奥の進の部屋にいた。膝を抱えベッドに丸くなって横になっていた。

  「ノックしても返事がないんですもん…心配になって開けちゃった。」

静かに扉を開いて入って来たユキ。

  「ユキ……」

進が横になったままつぶやくようにユキの名前を呼んだ。

  「なぁに?」
  「俺は…どうしたらいい?」

きっとずっと泣いたんだろう…泣き顔を見られたくないらしく(当然だろう)部屋のカーテンは閉められて電気も点いていなかった。

  「見ただろ?」

進はわざと検査の結果をユキに見せるためにカウンターに結果を置いた。

  「元気な赤ちゃんを産んでください、なんて…どの口が言ってんだか…」

進の肩が震えていた。

  「ねぇ…古代くん?」

ユキがそっと進の手を握る。

  「私…赤ちゃんを産むために結婚したんじゃないわ。古代くんと一緒に
   いたかったから…古代くんの帰る場所を作りたくて結婚したの。確かに
   赤ちゃんが出来たらそれこそ幸せだと思うけど子供が全てじゃないと私は
   思うわ。」

ユキが深呼吸をする。

  「実は…もう、一週間前になるんだけど私…佐渡先生に相談した事があるの。
   私の身体、子供が出来るからだかどうか調べてほしい、って。」

ユキの告白に進は驚いた…が進の部屋は暗かったのでユキにはわからない。

  「今まではしっかりバースコントロールしてたけど何もしてないのにどうして
   子供が出来ないんだろ、って思って…で、佐渡先生に知り合いの婦人科の
   先生を紹介してもらったの。そしたら…古代くんにはいい報告、出来ない
   って…言おうかどうしようか迷ってたの。古代くん、赤ちゃんほしいだろう
   し…私も結婚したら絶対に古代くんに本当の家族をプレゼント出来る、って
   信じてたし…。」

ユキの眼から涙がぽろりと落ちた。

  「私の身体、ちゃんとしたタマゴを作れないんですって。」

ユキの告白に進は息を飲んだ。

  「古代くんの数値、見せてもらったわ。確かに正常値より少ないかもしれ
   ないけど全く可能性のない数字じゃないわ。」

進は自分の事しか考えていなかった事に気付いた。

  「ユキ…」

進がベッドから起き上がった。

  「自然に妊娠する可能性だって0じゃない、って。私の体調によると思うん
   だけど…お互い、事実を認めてこれからの事、相談しよう。」

進は静かに起き上がるとユキをぎゅっと抱きしめながら頷いた。