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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)9

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  「ねぇ古代くん?」

みんなが帰った後でユキが進に声を掛けた。

  「最近、うなされてないわよ。」

ユキがにっこり笑う。進はそう言えばそうかも、と気が付いた。進はユキが入院してからずっとユキの病室で寝泊まりしている。

  「やっぱり…」

進はそっとユキの手を握った。

  「やっぱり?」(ユキ)
  「ユキが特効薬、って事なんだよ。ユキとこの子が俺の心の闇を消してく
   れたんじゃないかな。」

進はそう言ってユキに優しいキスをする。

  「あ、それと…」

進はユキに“報告する事があります。”、と言った。

  「しばらく防衛軍の訓練学校の講師をする事になった。長官から言われてて
   断ろうと思ったんだけどユキのそばについていたいし…ずっと、って訳には
   いかないだろうけどしばらく…数年間、“先生”してみようと思う。」

ユキは進が飛びたいのを知っている。

  「でも!」

ユキが抗議しようとしたのを進が止めた。

  「子供の小さい時って一瞬だろ?サーシァに比べたらうんと長いと思うけど
   うんと小さい時、一緒にいてやりたいんだ。どうせ大きくなったら自分
   ひとりで大きくなったような顔するんだろうから。だからかわいい時、
   大変な時をユキと一緒に子育てしたいんだ。」

進が柔らかく笑う。いつからこんな風に笑えるようになったんだろう?と不思議に思う。

  「この子は奇跡の子…ひょっとしたら最初で最後の子育てになってしまうかも
   しれないだろう?だったら余計、そうしたい、て思うんだ。」

ユキはなんて自分は幸せなんだろうと思った。







  「ねぇ、古代くん?私いつまでここにいるの?VIPルームでしょ?ここ…
   そんなに…お金払えないわ。」

ユキが急に現実的になった。

  「ここ?長官が絶対ここで、って…。まぁマスコミ対策だと思うよ。俺が病院に
   出入りしてるのがバレると憶測で話が進んじゃうだろうし…。ユキが一般
   病棟に移ればすぐにバレるし…軍で払います、って事になってるから
   いいんじゃないか?」

ふたりの結婚式もテレビやインターネットのニュースでしっかり流れている。なかにはヤマトの大特集を組んで、ふたりの出会いから婚約発表、今回の結婚式…と言う大々的な番組まで出て来ていた。イスカンダルから帰って来た後は遊星爆弾の落ちてくる前のアイドルと同じ状態で表に出るとすぐに写真を撮られたり後をつけられたり、と大変だったのを思い出す。未だにメインクルーは人気があり町を歩いている時も声を掛けられたり写真を撮られる事もしばしばだ。“写真を撮らせてほしい”と言われる時は断るが予期せぬところで撮られている事もある。(時々雑誌に載ったりする時もある。)進的にはユキの熱狂的なファンが何かしでかさないか、も心配の種だった。護身術を身に着けているとはいえやはり女性。無理の利かない身体なのに何かがあったら、と思うと進は心配でしょうがなかった。でも進の頭の中に“仕事を辞めさせる”という選択肢はなかった。ユキがどれだけ頑張って今があるか、を知っているから。

  「古代くん…」

ユキが進を見上げる。

  「いいんだよ、俺たちは地球を救ったんだ、これぐらいの贅沢したって
   誰も文句言わないって!」

もちろん、進の本心ではないが病院ならユキも無理できないだろうと思ったのでちょうどいい、と考えた。

  「俺はユキのいるところに帰って来るからさ。家でもココでも同じさ。」

しばらくすると進は食事を終わらせて“また後で。”と言って軍の司令部に戻って行った。