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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)9

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  「あ…古代くん…私…」

ユキの眼が覚めた。

  「ユキ、気分はどう?」(進)
  「えぇ…大丈夫、何ともないわ。」(ユキ)
  「スープ、飲む?」(進)
  「そうね…」

悩んでるユキに進が立ち上がってこういった。

  「お腹が空いてなくても少しお腹に入れた方がいい。温めてくるから
   ちょっと待ってて。」

進がミニキッチンで山崎の妻の作った冷凍スープをレンジで温めて持ってきた。

  「ヤケドするなよ。」

空いてる手でテーブルを動かしてセッティングしてやる。

  「ありがとう。」

ユキはスプーンをとると一口ずつ飲んだ。

  「モリタ先生がさっき来てね…俺の検査して戻って行ったよ。異常なし、
   だってさ。」

ユキがスプーンを置いて“そう、よかったわ”と呟く。

  「ごめんなさいね、不良品の子宮だから…落っこちそうになっちゃうの。
   でも買い替えできないから…産み月まで子宮が持ってくれるかしら…」

ユキの正直な気持ちだった。自分自身、医療に携わっているからどれだけリスクがあるのかよく解っているのだ。だからこそ今回胎児が子宮に留まっている事が奇跡だという事も分かっている。

  「少し前なら結婚して自然に子供が出来て…家族が増える、って当たり前
   の事だったのに…今はとても贅沢な事…私、自分がどうなってもこの子を
   産みたい…古代くん、もし…もしも私かお腹の子か、って言われたら迷わず
   お腹の子を選んで。私は古代くんと出逢って…愛されて…幸せを味わった
   から…この子にも同じ気持ちを感じてほしいから…だからお願い、もしも
   の時は…」

ユキの言葉は進の人差し指で遮られた。

  「もしも、の時の事なんて考えちゃダメだ。いいか?俺達にはみんなが
   ついてる。きっとユキの事もお腹の子の事も守ってくれるさ。だからユキは
   何よりも自分を大切にしてくれ。自分を大切にすれば自然とお腹の子も大事
   にするだろう?この子が…(ユキのお腹を触って)無事に五体満足で
   生まれてくればいいんだ。それ以上何も望まない…」

進の顔は今まで見た中で一番穏やかだった。

  「古代くん…」
  「ユキは自分の事だけを考えて…いいね?ほら、冷めちゃったよ?温め直す?」

進の言葉にユキは首を振るとスプーンを取り一口飲んだ。









  「真田さんですか?」

進が買い物に行く、と言って地下の病院と軍の司令部の連絡通路の所で真田に電話を入れていた。

  <あぁ、ユキはどうだ?>
  「さっき目が覚めて…気分はよさそうです。またしばらく退院できなさそう
   ですね。」(進)
  <そうだろうな。でも病院でたら無理しそうだからこのままでもいいような
   気もするが…>(真田)
  「そうなんですよね…実は私もこのままの方がいいような気がして…」(進)
  <隣だしな…建物…>
  「そうなんです、何かあった時飛んで行けるので。」

さらっとそう言える進が新鮮な真田。

  <明日は病室に行っても大丈夫そうか?>(真田)
  「大丈夫だと思いますよ。」(進)
  <みんな心配してるからな。俺からメールしておこう。特に相原は仕事に
   支障が出るかもしれんからな。>

真田の言葉に進は笑ってしまった。

  「ユキのアドバイス、かなりズバリ、なんでしょうね。」(進)
  <あぁ、そうらしい。VIPが来る場合、前日にユキに注意事項を聞いて
   おかないと心配で眠れない、って言ってた。>

英雄の丘のセレモニーが終わった後はVIPが勢ぞろいしていたのでさぞかし大変だった事だろう。ユキも少し手伝いしたそうな感じだったがやはり体調一番、との事でセレモニーが終わるとレリーフを見て早々に引き揚げたのだった。

  <じゃぁ俺も明日、顔を出すよ。>

真田はそう言って進の携帯を切った。