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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)10

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 「お邪魔するわね。」

この数カ月の入院ですっかり紫と仲良くなったユキ。紫は点滴を片手に持って入ってきた。

  「あら?ベッドから降りようとしてた?」

上掛けをずらした状態のユキに紫が聞いた。

  「少しかぼちゃ、食べようかな、って思って…。」(ユキ)
  「そう、寝てて。私がするわ。」(紫)
  「そんな…先生にやっていただくなんて…」

ユキはそう言ったが紫はユキの左側に座るとさっさと腕を取りもともと刺さっている針に点滴を注した。

  「これで動けませ~ん。大人しくしていてください。」

紫はそう言うと冷凍庫からかぼちゃを取り出しキッチンにある蒸篭に並べた。電子レンジの扉に幕の内が貼ったチンする時間の目安のメモがある。

  「すみません。」

数分後、おいしそうに湯気を立ててユキの前にかぼちゃが出てきた。

  「前に古代さんがやってるの見たのよ。お塩は?」(紫)
  「ここにあります。」

ユキの枕元のバスケットの上のふきんをとると塩の入っている小瓶がいくつか並んでいた。

  「お塩、一つじゃないの?」(紫)
  「幕の内さんがいろいろ持ってきてくれて…こっちは抹茶が少し混ざって
   いるのと…こっちは梅。これは岩塩を挽いて使うものでこれは塩の結晶…
   梅がお気に入りで…先生もおひとつどうぞ。」

ユキは少し塩を振って先に紫にすすめた。紫は“遠慮なく”と言いながら一口大に切ってあるかぼちゃを食べた。

  「……うそ…甘い。ふつうに煮るよりおいしいわね。蒸篭の香りがいい感じ。」

ユキが紫の感想を聞いて満足そうに頷く。

  「おいしいですよね。かぼちゃに岩塩も合うんですよ。」

そういいながら岩塩を挽いて“もう一つどうぞ”と勧める。紫はもう一つ食べた。

  「へぇ…お塩ひとつで全然違うのね。驚きだわ。」

そこで紫の院内専用携帯が鳴った。

  「あ!午後の回診の時間だわ!」

紫が慌てて電話を取りながら“じゃぁね、ごちそうさま!”と出て行くのをユキは笑顔で見送った。

  「ふふふ、じゃぁ私も食べよう、っと…いただきます。」

時間は午後2時…もう少ししたら進も来るだろう。今は軍ではなく訓練学校の講師をしている。午後2時からは全体でスポーツの時間なので進はこの時間に昼食をとるように休憩を入れているので毎日同じ時間にユキの所へくる。藤堂と山崎の妻が来てくれたせいか気分もよかった。





  「つわりっていつまで続くのかなぁ…。」

夜、トイレから出てきたユキがつぶやいた。顔色もかなり悪い。進がそっと手を出してユキを支えた。

  「代わってあげたいけどなぁ…。」

進の小さな呟きにユキは青白い顔を上げて微笑む。

  「大丈夫…古代くんの家族を増やすためだもん。無事に産まれてくれれば
   それでいいの。」

ユキはそっとお腹に手を当てる。

  「そうだね…。」(進)
  「居心地悪いみたいだけどもう少しいてもらわないと困るから…。」(ユキ)
  「うん、大事にしないとな。」

進の言葉にユキは頷くとベッドに横になった。