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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)10

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  「ユキ!」

進が息を切らせて病室に入ってきた。ユキの顔色は悪かったがすっきりした表情だった。

  「古代くん…赤ちゃん、見てくれた?」(ユキ)

進は病室にいる紫も看護士も目に入っていない。少し遅れてモリタが息をゼイゼイ切らせながら入ってきた。

  「うん、見て来たよ…本当に頑張ったね。ありがとう…本当にありがとう。
   最高の贈り物だよ。」

進がユキの手を握って泣いている。その姿を見て紫もうるっときてしまった。

  「よかった…そう言ってくれて…。」

ユキの声は弱々しかった。紫が涙を拭いて進に話しかける。

  「古代さん、おめでとうございます。第一子、女児誕生です。お子さんは
   元気な産声を上げました。両手と両足を一生懸命動かしていました。ただ
   ユキさんははやり出血が多くしばらく安静にしていた方がいいと思います。
   貧血も酷く血圧もかなり低いです。恐らく歩く事もできないでしょう。
   輸血をこの後します。ユキさんも…まぁ動けないと思いますがとにかく
   休んでくださいね。あ、食べたければ何を食べてもいいですよ。疲れて
   るでしょうから甘い物でも買ってきてもらったらいかがかしら?」

紫はそう言うとモリタと顔を合わせ頷くと看護士を連れてユキの病室を出て行った。



  「やっぱり退院、しない方がよかったんだね。」

進がベッドの横の椅子に座ってユキに話しかけた。実は退院の話はユキが子供を産む前に少しでいいから自宅に戻りたい、と言ったのが発端だった。ユキは前置胎盤は出血のリスクはよく解っていたが一日でもいい、進と普通に暮らす日がほしかっただけだった。

  「……うん。」

まさか退院する日にこうなるとは思わなかった。ユキは自分が言った事だったので反省していた。

  「きっと…赤ちゃんが守ってくれたんだ。もし、明日、俺が仕事に行った後
   今日みたいな事が起きてたら大変な事になってただろうからね。」

進は島と女神たちおかげか?と思ってしまった。

  「そうかもしれないわね。」

ユキは素直にそう返事をしたが心の中でみんながあの子に“今だ!”って知らせたのかも、と思ってしまった。

  「疲れただろう?少し眠った方がいい。」

進がユキの唇に時分の唇を落す。

  「もう、ママとパパだ。」

進の眼から涙が落ちる。

  「そうね…本当にそうなったわね。」

ユキはあのマゼランをバックに写した写真を思い出していた。もちろん進も思い出している。

  「いろいろあったけど…本当にありがとう。何にも代えられない家族を
   ありがとう。これでユキとも本当の家族になれたんだな。間接的だけど
   血の繋がりのある家族になれた…。」

ユキはイスカンダルへの航海の時、通信室で独り砂嵐の画面に向かいただ座っていた進の寂しい背中を思い出し涙が溢れた。

  「もう…待っててくれる人がいる…寂しい思いなんて随分前からしてないけど
   やっぱり血の繋がった人がいる、ってすごい事だしいい事だな、って
   思うよ。」

進はあっ!と言って思い出した。

  「どうしたの?」(ユキ)
  「ユキを驚かせようと思ってケーキを買っておいたんだ。取って来るから
   待ってて!」

進はそう言うと上着を羽織りダッシュでユキの病室を出て行った。ユキはその後ろ姿を見てクスクス笑っていた。しばらくすると看護士が真っ赤な袋を持ってユキの病室に来た。

  「ユキ、おめでとう。」

元同僚の看護士が素直に声を掛ける。

  「ありがとう。」(ユキ)
  「今、古代さんがすごい勢いで出ていたけど?」(看護士)
  「なんでもケーキを買ってあったんですって。急いで取りに行ったわ。」

ユキが笑顔で答えると

  「そうよね、本当なら今日、退院だったんですものね。」(看護士)
  「ふふふ、そうね。」(ユキ)
  「思い出すわ…ユキが従軍看護士に志願した時の事…意志の強さを見せられた
   感じだったわ。まさかそれから数年で長官付の秘書になってその上ママに
   なるなんてね。」(看護士)
  「自分でも信じられないわ。」(ユキ)
  「あ、業務確認!え、っとこちらの血液は以前ユキの血液と適合するか先に
   調べておいたものです。今から点滴を始めます。」(看護士)
  「…はい。」(ユキ)


看護士は少し雑談しながらユキの様子を見てから立ち上がった。

  「うん、今の所大丈夫そうだけど気分が悪くなったら我慢しないですぐに
   知らせて。」

看護士はそう言うと“じゃぁね”と言ってユキの病室を出て行った。