ガルマンガミラス滅亡の危機2
「で、話を聞こうか。」
通常だと夕食後明日の予定を話し合う時間なのだが…
「ですから単に総統のお話し相手に、と思っただけでございます。先日それは
楽しそうに話されていました。その話し方を見て私はリィ様がとても聡明な
方だと思いこちらに来ませんか?と声を掛けたのです。それに今総統府で
働いている女性は全てガルマン人です。新しい風も必要なのでは、と思った
のもあります。ましてこのような事態になり…それを逆手に取るのもいいの
ではないかと思ったのです。これを機に他国の文化に触れるのもいいかも
しれませんし。」
タランはデスラーに問われた時に応えようとしていた言葉をすらすらと出す。デスラーもそう言われればその通りなので否定しようがない。
「まぁよい…明日の予定を…。」
タランはデスクのパネルを開き明日の予定を告げた。
「ふむ…変わりなし…か。突然来たから突然いなくなるものだと想定して
いつも今日はいなくなっているかもしれないとほのかな希望をもってここに
来るのだが…残念だ。」
デスラーは日課となっている銀河の谷に来ていた。
「その予知はこのシャルバートでもできませんね。」
観測員が肩を落とす。
「お力になれずすみません。」(観測員)
「いや、そんな事はない。本当に感謝している。」(デスラー)
「デスラー総統。」(観測員)
「なにかね?」(デスラー)
「先日…この赤色銀河の交差と関係があるのか…突然画面に今まで見た事のない
天体が現れました。ご覧になりますか?」(観測員)
「見た事のない天体?」(デスラー)
デスラーが身を乗り出すのを見て観測員の両手が器用に動く
「これが水惑星…通称アクエリアスと呼ばれている天体です。宇宙を大きな楕円
の軌道を描いて回っている様子で…ただ今回突然現れたのでおそらくこの赤色
銀河の影響が大きいとみられております。」(観測員)
「この天体は…?」(デスラー)
「はい、星のほとんどが海で覆われ3本の輪…氷の粒ですが…それが星の周りを
回っている大変美しい星です。でも近くを通るとその星の引力がアクエリアスの
水を呼び大洪水を起こさせてしまう…大変美しいですが大変恐ろしい星でも
あります。ただこの星は銀河系中心から外部に向かって回遊しておりますので
影響を受ける星は余りないでしょう。速度は光速の半分です。銀河系を抜ける
のは何百年もかかる計算ですね。」
アクエリアスの進路の先にオリオン湾が見える。
「この星はオリオン湾に到達するのか?」(デスラー)
「そうですね、予測進路はそうなっておりますが先ほど申し上げたようにこの
星は他の星の引力の影響をたいへん受けやすい。まっすぐ進むかどうかも
分かりません。直線コースではそうですがその手前で少しずつカーブを描く
ような軌道であればオリオン湾にはいきませんし…予測は難しいですね。」
デスラーは観測員の言葉に安心した瞬間…
「アッ!」
係員が声を上げた
「どうした?」(デスラー)
「今…アクエリアスが消えました…。」
確かにさっきまであった星がない。
「どういう事だ?」(デスラー)
「わかりません。調べます。明日、結果をご報告しますので。この映像は
リアルタイムではありません。記録を見ると8時間前の映像です。銀河系が
大変不安定になっているので亜空間での観測も限界があります。画像の乱れ
で星が消えたように見えたのかもしれません。赤色銀河の範囲が広がって
いる今、記録が残りにくいのも事実です。大変申し訳ございません。」(観測員)
「いや、実際助かっている。少しでも情報が欲しい。」
デスラーと観測員のやりとりをタランも聞いている。
(アクエリアス…)
デスラーとタランは顔を見合わせた。
作品名:ガルマンガミラス滅亡の危機2 作家名:kei