ガルマンガミラス滅亡の危機2
<アクエリアス>
「デスラー総統?」
昼食の給仕をしながらリィがデスラーの食が進まないのを機にして声を掛けた。
「お口に合いませんか?」
昼食のメニューを考えたのはリィだった。口に合わないものを出せば最悪の事態も考えられると聞いている。リィは恐る恐る聞いた。
「…いや、考え事をしていた。」
自分の星の事ではないが…かつて我が物にしようとした星…今後永遠に自分の星にならないのになぜ、こんなに気になってしまうのか…。ふとスターシァの面影とユキの面影がデスラーの脳裏をよぎる。
(ユキ…キミがイスカンダルの王女の面影を残すからだろうか?)
スターシアの次に思い浮かぶのは必死に進を守ろうとするユキの姿だ。
(私には愛する者の姿が見えない…見えるのは愛する者を守ろうとする美しい
女性の姿だ。)
と、そこへリィの姿が目に入る。タランが連れて来ただけあって美しい娘だった。スターシァともユキとも全く違うそのイメージが新鮮だった。
「ご両親とは連絡を取っているのか?」
デスラーは一口料理を口に運んで聞いた。リィは突然話を振られて一瞬驚いたが
「はい、昨日何をしたのか、粗相はしなかったかなど話をしました。余程信用が
ないみたいです。」
リィはそう言って柔らかく笑った。つられてデスラーも笑う。
「そうかね?」(デスラー)
「ちゃんとお酒を注げるか、とか食器は音をさせずテーブルに置いているか、とか
そんな事ですから。」
その会話をそばでタランも聞いている。
「で、そなたは何と答えたのかね?」(デスラー)
「普通、そんな事心配する事じゃないでしょ?、と言いました。」(リィ)
「…よい。普通の会話というものを余は知らない。余はそなたがうらやましい。」
リィはよく考えてみたらデスラーの周りに家族らしい人がいない事に気付いた。そばにいるのはいつもタランだけ。
「そう…でしょうか?」(リィ)
不思議そうなリィにデスラーは笑ったがその後食事を進め何事もなかったかのように食事を終えた。
「タラン、ルダ女王から連絡が来たらすぐに知らせるように。」
デスラーはそう言うと私室へ入って行った。
「タラン将軍…私、なにかいけない事言いましたか?」
リィが不安そうに聞く。
「いいえ、なにも。大丈夫です今総統の頭の中はある事でいっぱいなんです。
今はそれしか事がないのでそればかりを考えてしまって煮詰まってしまって
いるのでしょう。ご自身が動ければ動いて解決される方ですが今回はご自身で
動けないので…。」
デスラーの気持ちをタランが代弁する。
「そう…ですか?」(リィ)
「デスラー総統はご家族がいません。ご心配されるご両親もいらっしゃいません。
なのであの後どう、話したらいいか判らなくなってしまったのでしょう。
何も心配なさらずご自由にお話し下さい。銀河系が落ち着いてまた元の空間
に戻ったらこんなにゆっくり時間が流れる事はありませんから…今限定だと
思ってお相手下さればよろしいのです。」(タラン)
「ご両親がいない?」(リィ)
「えぇ、あの方は天涯孤独…ガミラス政権を握る前からお一人でした。誰も
信用せず生きてこられたのです。信じらはれるのは自分の力だけ…その強い
信念で今まで来ています。」(タラン)
「でも今はそんな感じではないような…」(リィ)
「総統は…地球と係わって変わりました。いい方向へ変わっているので心配する
事はないのです。リィ様は今のデスラー総統しか知りませんよね。だから
いいのです。」(タラン)
「そうね、過去は過去。今が大事なんですもんね。」(リィ)
タランはリィの前向きな姿を見たような気がした。
「デスラー総統…お休み中、すみません。ルダ女王より連絡が入りました。」
時刻はすでに夕刻を過ぎもうすぐ夕食と言う頃だった。
「わかった…すぐに支度をする。」
タランはルダからの私信を受け取りすぐにデスラーに告げた。デスラーは何かあればすぐに出かけられるよう準備を整えていたのですぐに出かける事が出来た。いつもより早く走る帆船に乗りルダのいる宮殿を目指す…
作品名:ガルマンガミラス滅亡の危機2 作家名:kei