ガルマンガミラス滅亡の危機2
「美しい星だな…。」
デスラーはガルマンガミラス人が避難場所として与えられた大陸の一つへ来ていた着の身着のまま避難してきた一般市民はすでに現地の民族衣装に着替えていた。
「デスラー総統。」
敬礼をして声を掛けるウルフにデスラーは静かに手を挙げた。
「お前も少し休むといい。」
デスラーは静かに声を掛けた。
「何をおっしゃいますか、デスラー総統も全くお休みを取られていないと伺って
おります。デスラー総統がお休みになられないのに私めが休むなど…。」
ウルフがハッとした顔をした
「もしや、私か私の部下が何か粗相でも?」
ウルフが恐る恐る聞いた。
「何もない。安心したまえ。私が倒れてもいまのガルマンガミラスになんの影響も
なかろう。しかしお前達のような者に何かがあってはいかんと思っているのだ。
一般市民をまとめるのと軍をまとめるのとは違う。軍は力づくで何とかなるが
一般市民はそれじゃまとまらない。」
デスラーが静かに話す。
「…これを知ったのは私も最近だが…。」
ウルフは苦笑いをした。確かにヤマトが来てから総統は変わった。なぜあんな小さな戦艦にこだわるのか全く分からなかったが今はよく解る。
「デスラー総統。」
ウルフがデスラーに声を掛けた。
「どうぞこちらで少しお休みになってください。総統がお休みになられれば
私もご一緒に休ませていただきます。」
ウルフはずっと右手を直角にあげたまま。タランもその様子を見て笑っている。
「こちらの芝生はとても気持ちが良くそこで寝転ぶと心地いいと私の部下の子供が
申しておりました。」
ウルフの言葉にタランの眼が丸くなる。
「おそらく総統は芝生などと言うところで寝転ぶなんて事をした事ないと思い
ますが多分、ここでしかできない事でしょうからぜひ…実は私も昨日、芝生の
上で食事をしました。大地を肌で感じる心地よさを初めて知りました。
生意気を言うようですがこの気持ち良さを総統にも、ぜひ…。」
ウルフの顔がまるでいつもと違った。デスラーの知っているウルフはいつも何か獲物を探すような鋭い眼をしているのに今日はあの戦闘のない時の古代の様なそんな顔をしていた。
(そうか…ウフルも古代と同じか。)
デスラーは無言で笑うと右手を挙げウルフの敬礼を解かせ案内するよう外に向かって指をさした。
「タラン…いつまで立っているのか?」
男二人が芝生に寝転んでいる横でタランが唖然と立ってデスラーとウルフを見下ろす形になっていた。デスラーは首の下で両手を組み左ひざをたて右ひざをその膝に重ね芝生に寝転んでいた。もちろん下に何も敷いていない。芝生に直に寝転んでいるのだ。
タランは仮にも一国の長、総統を見下ろした格好になっていた事に気付き慌てて足元の方へ移動し跪いた。
「よい、タランも寝て空を見上げてみろ」
タランは“失礼いたします”と言いながらマントを整え横になり仰向けになった。
「あ…」
タランは目を見張った。
「こうして…空を見上げるなんて初めてだ。空はこんなに青く雲は白いのだな。」
当たり前の光景が今まで見えていなかった、と平和とはこういう事なのだ、とデスラーは初めて知ったような気がした。
デスラーは人の気配で目を覚ました。いつの間にか寝てしまったようだ。誰かが三人に薄い布を掛けてくれたおかげで体は冷えずに済んでいた。
「お目覚めになりましたか?」
民族衣装を着た女がデスラーに声を掛けた。その声でタランとウルフも起きた。
「これはキミが?」
デスラーがその布を手に取り聞いた。
「はい、こちらは暖かいですが地にそのままおふせになっておりましたので
体が冷えてお風邪を召されては、と思いまして。」
女はそう言いながら温かい飲み物をデスラーに渡した。タランは“あっ”と声を掛けそうになったがデスラーはそれを受け取ると香りを嗅いでそのまま口を付けた。
「総統…。」
タランはいつもデスラーが口にするものをスプーンですくい毒見をしていた。万一、総統に何かがあったら、と…。
「体が温まりそうだ。」
デスラーは女に向かい声を掛けると眼で二人にも受け取るよう促した。
「なぜ?ここに?」
タランが飲み物を受け取りながら聞いた。
「ルダ女王がこちらに向かうように、と。」
タランは女王がすべてお見通しの事を知り苦笑いをした。
作品名:ガルマンガミラス滅亡の危機2 作家名:kei