ガルマンガミラス滅亡の危機2
タランは考えていた。
(美しい娘だった。国王の血を引くという事はきっと聡明なのだろう。話を
していても楽しかった。無礼な事もなくそれでいて無愛想な事もなく…)
今までタランは何人もの女性を見てきた。デスラーと顔を合わせた女性は色目を遣い媚び諂う者ばかりだった。でもあの娘は違った。
(ぜひ総統のお相手に…)
ガミラス人の女性はほとんどいない。タランはガルマン人から花嫁候補を探すつもりだった。しかしデスラーのお相手ともなればそれなりの人となりの上に博識でないとダメだ。
あの娘とデスラーが話している様子を思い出す。デスラーも進んで話をするぐらいだった。
(年は離れているかもしれないが身の回りの世話をしたり話し相手にどうだろうか…)
タランはいろいろ策を練り始めた。
「なぜあなたがお茶を運んできたのですか?」
にこやかだった母の顔はどこにもなく娘に対し厳しい顔になっていた。
「だって…私たちを苦しめる人がどんな人なのか直接見たかったんだもん。
国にいれば何不自由なく暮らせたのに…今じゃこんな狭い部屋で暮らさないと
いけない…。」
娘は国王の姪だ。国にいればそれなりのいい縁談に恵まれてなにも苦労しないで暮らしていける保証があった。
「でも、そのおかげで私達は助かったのだよ?もし母星に残っていたら母星ごと
無くなっていたかもしれない。それにボラーだったら私たちなど見捨てて
軍だけで逃げてしまっただろう。私達はデスラー総統に感謝しなくては
いけない。こうして不安な人に会って少しでも安心感を与えてくれている。
誰もが不安だ。暴動が起きてもおかしくない状況なのにこうして何も起きない
のは軍を統括している上の人間がしっかりしているからだ。それはすべて
デスラー総統とその部下、タラン将軍のおかげだ。うわさで聞いたが有事を
察したタラン将軍が独断で全市民を避難させるよう指示を出したそうだ。
それを後から聞いたデスラー総統は最後にガルマンガミラスを出発されこの
星に避難する時も一番後ろだったそうだ。自分が助かれば全市民が助かる、
そう言って。」
父、ルイサーが静かに口を開く
「お前がデスラー総統にいいイメージを持っていないのはわかる…がお前は
私の子…自分の眼で見た事実を信じなさい。人の言葉に振り回されては
いけない。大丈夫信じなさい。自分の眼で見た事、事実、真実をしっかり
見抜けなければ全て間違った方向へ進んでしまう。兄は最後の最後でボラーを
裏切りデスラーに忠誠を誓った。それまで強制労働でボロボロになっていた
市民を助ける為に自分が犠牲になれば、とそう思って…。私達がいい暮らしを
していたのはボラーの幹部が年頃になったお前を迎えに来る契約だったからだ。
王はみすぼらしい暮らしをさせてはいけないとお前に贅沢させてくれていた
のだ。結局ボラーは領土を広げるのに夢中でお前を迎えに来る連絡がなかった
おかげで今があるのだが。」
突然の告白に驚く娘。
「総統がボラーから解放してくれて強制労働も終わってガルマンガミラス軍
が母星にやってきた。強制労働はさせないと言っていたが実際どうなるか、
なんてわからない。私達はボラーに属してる時より市民が人間らしい生活が
送れるなら、と思っていた。ガルマンガミラスの要求していることはわずかな
事だった。それならば、と私が国王に進言してガルマンガミラスへ行くと
言ったのだ。兄は首を横に振ったが国王に一番近い人間が行けばガルマン
ガミラスも信じてくれるだろうと思って。
母星はそれからガルマンガミラスのおかげで復興し国政も復活した。」
ルイサーはここまで一気に語ると娘の顔を見た
「私はここへきて正解だったと思う。兄には悪いが家族がこうして生きて一緒に
いられる事に感謝している。私はボラーがお前を、と迎えが来たらお前を
殺して私も死ぬつもりだった。
しかし今は総統に命を捧げても惜しいと思わない。」
その言葉を聞いて母も涙を流す。母もその話は随分前から聞いていた事だった。娘はそんな事全く知らずただ人質としてガルマンガミラスに送られたのだと思っていただけにショックだった。
「少し…頭の整理をさせて…。」
娘の顔色は真っ青だった
作品名:ガルマンガミラス滅亡の危機2 作家名:kei