ガルマンガミラス滅亡の危機3
「ヤマトよ…」
膨大なエネルギーが水柱を断ちきった。ほんの一部が地球へ落ちていくが水没するほどの量ではない。アクエリアスの表情は恐ろしくまるで怒った龍が怒りをぶつけながら地球へ向かうようにデスラーは見えた。
水面に一瞬ヤマトの残像が見えた。今までの戦いを奮起させるかのように波動砲口を天に向け別れを告げるかのように静かにアクエリアスの湖に沈んで行った。
「ありがとう…。」
デスラーはひとり甲板に立ち一人静かに涙を流した。
デスラーはヤマトの傍にいた艦に通信を送るよう命令した。受信したふゆづきは今まで受けた事のない信号だった事と受けたら肌の色が違う人種に驚き恐る恐る内容を確認して進に取り次いだ。
「デスラー…。」(進)
「古代…ヤマトは…」(デスラー)
「アクエリアスが最後のワープをした時点で…仕方なかったんだ。」
進の表情は思ったよりすっきりしていたが眼が真っ赤だった。
<ユキがいないようだね?>(デスラー)
「今、こっちに向かってるよ。メインクルーと一緒に来るよ。…ところで…」
進がガルマンガミラスの本星の事を聞こうとした時デスラーが進の言葉を遮るように話し始めた。
<ルダ女王が…ガルマンガミラスを救ってくれた。>
デスラーの意外な言葉に驚くと
<あれからガルマンガミラスはシャルバートと友好同盟を結んだ。別の銀河が
交錯した時、ルダ女王がガルマンガミラスの住民を受け入れてくれた。>
進が更に驚いていると
<ヤマトが太陽を制御した後われわれは母星に戻らず銀河系中心の同盟国に
向かった。古代の“戦いからは何も生まれない”と言う言葉を思い出して
同盟国とどう向き合っていくか、を考えた。これからだった…銀河系を
どうまとめて行くか…考え始めた矢先の事だった。>
進はデスラーが改心してくれた事を嬉しく思った。
<ルダ女王が地球が危ないと教えてくれて…異次元空間を飛びあの戦闘空間に
出た、と言うわけだ。間に合って…本当によかった。>(デスラー)
「デスラー…ありがとう。デスラーが来てくれなかったらヤマトはあの場所で
爆発していただろう…。デスラーのおかげで地球は救われた。」
その時ノックの音がしてメインクルーが入ってきた。
<ヤマトの諸君…>(デスラー)
「デスラー、ありがとう。」
真田が礼を言うと全員が頭を下げた。
<いや、礼には及ばん…それより一人足りないようだが…島、と言ったな?
ケガでもしたのか?>
デスラーは名前を憶えていた。
「島は…死んだ。」
進の眼にみるみる涙が溜まるのを見てデスラーは申し訳なさそうに
<そうか…悪い事を…すまん、古代>
デスラーは静かに眼を閉じた。
「デスラー、これからどうするんだ?」(真田)
<これからシャルバートに戻り今後の事を考えようと思う。銀河系中心は
決定的なダメージを受けている。国民には申し訳ないが別の銀河で再建
する事も視野に入れている。ルダ女王の好意にいつまでも甘えているわけに
いかないからな。>(デスラー)
「そうか…」(真田)
<揚羽くんから“頼む”と言われたよ。彼はガルマンガミラスの恩人だ。
彼の魂はルダと共にある。古代、安心しろ。>(デスラー)
「本当か?」(進)
<あぁ…常に王女の横にいる…まるで古代とユキのようにな。ユキ…少し
痩せたね。>(デスラー)
「心配してくれてありがとう。デスラー総統。私は大丈夫よ」
ユキはそう言って笑った。
<そうかね?女性の“大丈夫”は余り“大丈夫”じゃないと聞いた事がある。
無理をしてるのに気付かないから、とね。>(デスラー)
「まぁ…それは誰が言っていたのかしら?デスラー総統にもいい方が現れた、
って事かしら?」
ユキの問いかけにデスラーは笑った。ルダが今回の事で何度も無理をしているのを見ている。
<いかん、いかん。ユキと話していると何でも話してしまいそうになるな。
さて…私は行くよ。またいつの日か会おう。>
デスラーはそう言うと通信を切った。そして防衛軍の藤堂に連絡を取り礼を言うと少し会談した後通信を切った。
「タラン…あの中に先ほど艦長がいなかったな。」
タランは静かに頷く。
「艦長は艦と運命を共に…という事だろうか?」(デスラー)
「総統…」(タラン)
デスラーはそっとデスラー艦のデスラー砲の発射装置を撫でた。
「この艦と私も古代とヤマトのようになれるだろうか。」
デスラーは誰にも聞こえない小さな声でつぶやいた。
「全艦…太陽系外へ向けワープ!」
デスラー艦を先頭にガルマンガミラス軍は静かに太陽系の外へワープして行った。
作品名:ガルマンガミラス滅亡の危機3 作家名:kei