ガルマンガミラス滅亡の危機3
「タラン…この先国民を抱えてどうするべきか…」(デスラー)
悩みは尽きない。以前放浪の旅に出た時は数隻のデストロイヤー艦と三段空母で軍人だったから耐えられた旅だった。しかし国民を抱えて、となると食料の問題もしかり、先の見えない長い航海を耐えられるか、と言う問題もあった。今はおとなしくしている国民も狭い空間に押し込まれ先の見えない航海となると暴動を起こすかもしれない…。
以前だったら力で鎮圧する所だがもし艦の中で暴動が起きた場合力で鎮圧できなくなる可能性がある。
「お疲れ様でございました。」
ルダの宮殿から戻ったデスラーとタランはサランとリィに迎えられた。
「変わりはないか?」(タラン)
「はい。」(サラン)
ふたりの短い会話の間、4人は執務室へ向かい歩いている。
「リィはご両親の元へ帰らなかったのか?」
デスラーが静かに聞いた。リィが返事をしないのでサランが“はい”と答えた。
「リィ様?」
タランが振り返りリィを見るとただ下を向いて歩いている。
「具合でも悪いのか?」
デスラーも歩みを止めて振返りリィの背中をそっと支えるように触れるとリィは驚いてデスラーの顔を見た。デスラーはリィの顔を見て驚いた。リィの瞳に涙がいっぱいたまっていていまにも零れ落ちそうだったからだ。
「ごめんなさい!」
リィは突然そう言うと走ろうと思ったがその瞬間デスラーがリィの右腕を掴んでいた。
「なぜ…?」
リィは涙を見られた事が恥ずかしくその場を逃げようと思ったがそれもできずどうしようか悩んだ。言葉が出てこない。
(なぜ私は泣いているの?)
その瞬間大粒の涙が零れ落ちた。
「す…すみません、なんか…ホッとしたみたい…で。」
リィは再び下を向いて床に話しかけるような感じでしゃべる。
「父君と連絡は取れたか?」(デスラー)
「はい…無事…戻った、と父より…連絡がありました。」
今回、リィの父も志願してこの戦いに参加している。
「母が…足手まといにならなかったか反対に心配しておりました。」(リィ)
「相手の不意を突いた戦いだった。勝利して当然…今回はわが軍に犠牲が
なかった。そろって帰れたのは余も最大の勝利だと思っている。」(デスラー)
「リィ様、父君が戦場に行かれるなど心労がたたったのでしょう。今日は
ご実家に戻られてゆっくりされては?」
タランがデスラーの顔を見ながら言う。デスラーも静かに頷く。
「サラン様は一日も休んでおられません。それなのに私が休むなんて…」
リィは自分の言葉に固まった。
(え?私、ここへ来たかったわけじゃないのに帰りたいと思っていない?)
「リィ様?」(タラン)
「あ、いえ…。総統がお疲れで戻って来て私が休みを頂くわけに行きません。
先にお食事なさいますか?すぐに準備ができますが?」
リィが慌てて答える。すでに涙はなく顔を上げデスラーの顔を見て少し微笑みながら言った。
「デスラー総統、そうです。まずお食事なさって戦いの疲れをお癒やしください。
私達は大丈夫でございます。お二人が執務室にお篭りになっている間、休憩
させていただいているような感じですから。」
サランがにっこり笑って言う。
「そうか。そう言ってくれると余も安心する。休む間もなく働かされていると
言われそうでな。」
デスラーの言葉にタランは心の中で驚きながら顔は笑って聞いていた。今まで部下に優しい言葉など掛けた事などなくサランも驚きながら話を合わせようと必死のはずだと思った。サランの顔を何気なく見ると笑顔だが額に汗がうっすら浮かんでいる。
(そうだ、総統の前で粗相をしないよう必死だったはずだ)
タランは今回の事でデスラーが変わった、とそう思った。
作品名:ガルマンガミラス滅亡の危機3 作家名:kei