ガルマンガミラス滅亡の危機4
少し会話が途切れた。ふとデスラーの脳裏にスターシァと妹のサーシァ、そしてユキの顔が浮かんだ。
ひとりは誰も自分に意見など言わなかったのに面と向かって自分を非難した女性(ひと)。そしてその妹は自分の運命を顧みず姉の意志を胸にひとりイスカンダルを飛び立ちガミラスと地球の戦いで被弾して命を落とした勇敢な女性(ひと)。そしてユキ…。ユキに出会うまで人を撃つことに何ら抵抗を感じた事がなかった…それなのにただひとりの男…古代の為に命を懸けて護る姿を見たら思わずレーザーガンをフォルダーにしまっていた。そしてその男のレーザーガンをユキに握らせた。ユキが自分を撃つと思わなかったからそうしたのだが…。でもユキが古代を護るために時分を撃つかもしれない、と言う可能性はゼロではなかった…。
(“愛”…か。)
デスラーは自傷気味に笑った。スターシアもガミラスがどうでもよかったら忠告などしてこなかっただろう。親愛なる隣人として意見を述べただけだと、当時の自分に忠告できる人間は今の自分しかいないと思うとひとり苦笑いをした。……今なら分かる。自分にも人を愛する気持ちがあったとわかった今なら…。でも気付くのが遅すぎた。その時すでにスターシアの横にはあの地球人の男がいた。聞けば古代の兄だという…何と言う運命の巡り合わせなのか…それとも…神がいるならば植民地を増やすために手段を選ばなかったその罪なのか…悔いた時にイスカンダルは消滅した。スターシアの面影だけが残り自分の心にぽっかり穴が開いてしまった。全て“愛”ゆえの行動…。スターシァは親愛なる隣人だったから忠告し隣人だった余を救うため…ヤマトを救うためにイスカンダルを自爆させた。
余に愛を教えてくれたイスカンダルもヤマトも今はない…
デスラーは静かに眼を閉じた。
…コトン……
少ししてデスラーの足元に何かが落ちた。ふと足元を見ると空になったリィのグラスが落ちていた。横を見ると肘置きにもたれかかるように眠っていた。デスラーは声を掛けようとしたが笑みを浮かべながら寝ているリィを見ていたら起こすのがかわいそうになってしまった。リィは王家の家系に生まれながら今、デスラーの身の回りの世話をする侍従として働いている。
(疲れていたのだろう…今日は同盟国の要人のところへ行くのに一緒に回って
いたから…そこへアルコールが入れば…)
デスラーはなにか掛ける物をと思って自分のマントがあるとふと左肩にてをやったが寝る前だったので軍服でない事に気付いた。リィを起こさないようにそっと立ち上がると寝室からブランケットを持ってきてそっとリィに掛けてやった。
「…ん……?…」
リィはいつもよりふわふわのベッドに寝てるような気がして違和感を覚えた。そして半分寝ぼけてる頭で昨日の事を思い出してみる…。
(朝起きて…食事の支度をして…軽食を作って総統と一緒に草の上で食べた…。
初めての事でとても楽しかった…、で、それから〇〇星と〇△星と△$星の
要人のご自宅へ突発訪問したんだわ…みんな驚いていて楽しかった。私は
玄関の先で見てるだけだったけどすごく面白かったわ。)
ふふ、と顔が笑ってしまう。
(それから…帰って来て普通に総統の就寝前の酒をご用意して…ご用意して…
お相手をさせてもらって…それから?それから??)
その先が思い出せない。なんだかいろんな話をした記憶はあるけど総統のお部屋の灯りを消した記憶がない…。すでに頭は覚醒している。リィの頭の中でそれから、それから、が頭の中をぐるぐる回る。恐ろしくて今度は眼が明けられなくなってしまったがいつまでもこうしてるわけにいかない…
リィは意を決してぐっと強くまぶたに力を入れた後静かに眼を開けた。
作品名:ガルマンガミラス滅亡の危機4 作家名:kei