ガルマンガミラス滅亡の危機5
「わかっていたの多分、そうだろう、って…。もし無事だったら何とかして
ガルマンガミラスに報告するはずだもの…でも実際そうだった、って分かったら
涙が止まらなくて…。」
リィは涙が止まらない。
「リィ様…どうぞ今日、明日はごゆっくりしてくださいませ。ご自宅へお戻りに
なられますか?」(サラン)
「お父様はこの事をご存じかしら?」(リィ)
「それは私にもわかりかねます…しかし総統から連絡が行く事は間違いないで
しょう…。」(サラン)
「そうね…。明日、様子を見に戻ろうと思いますがよろしいでしょうか?」(リィ)
「えぇ…就寝前の酒を今日は私が運びます。その時に総統へお伝えします。」
サランが顔を覗きこむ
「今はお一人じゃ辛そうですね。私が一緒にいますから…。」
サランは侍従頭なので部屋も広く奥の部屋にベッドがあり手前の部屋にはソファーが置いてあってちょっとした応接室があった。
「お茶をいれましょう。少しお待ちくださる?」
サランはリィをソファーに座らせて一度厨房へ戻って行った。
「以前はミニキッチンに全部お茶セットが置いてあったんだけど今日、戻って
来たばかりだから何もなくて…全部一式持ってきてしまったわ。」
サランがお茶セットを別の侍従と一緒に持ってこさせミニキッチンに並べると侍従は戻って行った。そして湯を沸かしお茶を入れる。
「温かい物を飲むと少し落ち着くわ。」
サランがリィにお茶を手渡す。真っ赤な瞳でサランの顔を見てリィは受け取った。
「母星が無くなって普通でいられる人なんていないわ。」
サランがお茶を一口飲んだ。
「熱いわ、やけどしないように気を付けて飲んでね。」
リィが静かに頷く。
「でも、よかったわね…。あなたにはガルマンガミラスがあって。」
サランが笑顔で言う。
「だって…もう一つの故郷は救われているのよ?…そう…思えないかしら?」(サラン)
「もう一つの故郷…。」
そうだ、デスラーが永住したければ歓迎する、と言っていた。
「肌の色の違う私がガルマンガミラスを故郷と呼んでいいのですか?」(リィ)
「誰が気にするの?私は気にしないわ。総統だって気にしていない。だって
リィ様はリィ様なのですから。」
「失礼します。」
サランはノックしてデスラーの私室に入った。
「すみません、ガルマンガミラス本星に戻った記念の最初の夜のお相手がリィ
様でなくて…。」
サランがグラスを手に取りデスラーに手渡す。受け取ったグラスに酒を注ぐ…
「リィ殿はどうしている?」(デスラー)
「気疲れからか私の部屋眠ってしまわれました…総統、よろしければ明日、
リィ様をご実家に向かわせてよろしいでしょうか?」(サラン)
「ルイサー…リィ殿の父君にもアンダンの事を伝えた。明日一日と言わず
好きなだけいるといい…戻ってきたいなら戻ってくればよいしそのまま
自宅にいたいと申すのであればそれでもよい、と伝えよ。」
デスラーは戻ってこなかったら就寝前の楽しい酒がなくなる、ととても残念に思った。
「よろしいのですか?」(サラン)
「リィ殿が戻ってきたくないと申すのであれば…だが。」
デスラーの口調にサランは戻って来てほしいと思っていると感じた。
「かしこまりました…では明日、そのように伝えます。」(サラン)
「サラン、どちらかを選べ、という事ではない…事だけはしっかり伝えて
くれるか?」(デスラー)
デスラーの言葉にサランは頷いた。
「かしこまりました。総統はリィ様に戻って来てほしいのですよね?」(サラン)
「身の回りを任せられるのはサランとリィ殿だけだ。他はまだ信用できない
からな…リィ殿の父君は聡明な方だ。信じるに値する。」
デスラーは静かにグラスを空にしたのでサランがもう一杯注ぐ。
「リィ殿にお相手を頼んで…一度ここで酔いつぶれてしまった事があった。」
デスラーがその時を思い出しながら笑った。
「かわいらしい寝顔で…父君はこれだけかわいい娘を手放したくないだろうと
ふと思った。ベムラーゼに献上するとリィ殿には告げていなかったそうだが
美しく成長する娘を人質として育てていて…とても苦しかっただろう。私は
その気持ちを少しでも軽くできたら、と思っているのだよ。」
サランが頷く。
「自分の娘がひどい所へ嫁ぐとなると親は心配でたまらないでしょうね。それが
普通の結婚でも辛いのに正妻でなく側室、という事ですからまたそれも
辛い選択ですわ。」(サラン)
「そうだな…。」
デスラーはグラスに残った酒を一気に飲むとテーブルにグラスを置いてベッドルームへ入って行った。
作品名:ガルマンガミラス滅亡の危機5 作家名:kei