ガルマンガミラス滅亡の危機6
「まぁ・・。」
リィは窓の先に広がる海に目を奪われた。ふたりが部屋に入ると扉は静かに閉められた。
「人が…あんなに小さく見えます。」
リィは引き寄せられるように窓へ近付くと下を見て海で遊ぶ人が見をみた。
「気に入ったかね?」
デスラーがリィに聞いた。リィは静かに頷く。
「ここにはガルマンガミラスになかったものがたくさんある。」
デスラーがリィの傍を離れ違う方の窓を指さした。
「まぁ…。」
デスラーが示す方は緑豊かな森があり川が見えた。
「アンダンを思い出します。」
リィの瞳から涙がこぼれた。
「そうか…良い所だったのだな。」
デスラーがリィにフォークを渡す。
「はい。」
「フォーク…。強い男になれ…母とこの星を護る為に強い男になるのだぞ。」
リィの腕に抱かれているフォークはあやされていると思っているのか笑顔で“ダァ”と言ってデスラーの顔にそっと触れた。
「デスラー総統…演説の準備が整いました。」
新たなガルマンガミラス星に着いてまだ1時間も経っていないが演説の時間がスケジューリングされていてタランが迎えに来た。デスラーの私室の扉が開く。
「こちらでございます。」
基本、以前とほぼ変わらない施設だが初めての場所での演説。デスラーも少し肩に力が入っていた。リィもサランに手伝ってもらい着替えを済ませた。
「大丈夫か?」
デスラーが演説の壇上に立つ前にリィに聞いた。腕の中のフォークはニコニコ笑っている。リィはフォークの顔を見てにっこり笑うと
「はい。」
と答えた。
デスラーが演説会場に姿を現すと会場は一気に盛り上がりどこからともなく“デスラー総統万歳!”と聞こえそれが大合唱になった。デスラーはそれをただ黙って聞いている。フォークは最初驚いた様子だったがそれに気付いたデスラーがリィからフォークを抱き上げ自らの腕に抱いた。それを見た観衆は更に大きな声で“デスラー総統万歳”と叫んだ。
「諸君…。」
デスラーが右手を挙げて話しはじめると会場は一気に静かになった。
「我々は…とうとう新天地にやって来た。」
その瞬間観衆がワァァ、と歓声を上げる。
「余は…みなに感謝する。多々なる危機を一緒に乗り越えてくれた。」
会場はデスラーの静かな声で静まり返った。
「ガルマンの民よ…よく決断してくれた…。母星を去る事はたやすくない
事を余はよく知っている。余に付いて来てくれて…心より礼を言う。」
デスラーは右手を挙げた。
「ありがとう。」
そう言うと右手を下げた瞬間から
「「デスラー総統万歳!ガルマンガミラス万歳!」」
と歓声が上がった。デスラーはその声を聞いてリィの顔を見た。リィもデスラーの視線を感じてにっこりわらう。その仲睦まじい様子を見た観衆がもっと大きな声になり万歳を繰り返す。デスラーは最後右手を挙げると演説台を下りた。
「大丈夫か?」
リィは観衆が見えなくなったところで足から力が抜けその場にへたり込んでしまった。
「は、はい…。」
リィの姿を見てサランがデスラーからフォークを受け取った。そしてデスラーがリィの手をとり立たせ傍にあったイスにリィを座らせた。
「すごい…観衆で…圧倒されてしまいました。」
ラージベルがリィに冷たいお水を渡す。
「ありがとう。」
リィは少し飲んで大きなため息をついた。
「私…場違いにいたんじゃないかと思ってなんだか倒れそうになってしまいま
した。」
リィがグラスをラージベルに返す。
「さぁ、今日一日はお部屋でゆっくりなさいませ。お疲れでございましょう?」
馴れない戦艦で長い航海を経験し着いてすぐに演説に付き添ったリィに向かってサランが言った。
「総統はまだ休めませんわね。」
サランがそう言うとデスラーは頷いた。
「これからが忙しくなるのだからな。サラン、リィとフォークを頼む。」
デスラーはそう言うとラージベルに目配せしリィを見て執務室のある方へ向かった。
作品名:ガルマンガミラス滅亡の危機6 作家名:kei