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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 15

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第54章 再現、虹の少女


 レムリアにて、ハイドロから最後の灯台解放を託され船出してから三日で、プロクスへとロビン達はたどり着いた。
 普通に航海していけば一月はかかりそうな距離であったが、船に取り付けられた翼がたった三日での到着を可能にした。
 レムリアでハイドロが見せてくれたように、プロクス付近は、海は流氷に閉ざされ、空は猛吹雪により近づくことさえままならなかった。
 そこで役立ったのは、ルンパよりもらい受けた、テレポートのラピスであった。そのラピスラズリの指輪を操ることができるのはシバのみであり、シバが指輪の力を解放し、テレポートによって船そのものをプロクスの村へと飛ばす離れ業をやってのけた。
 しかし、船を飛ばす『グラビティ』のエナジーをレムリアからずっと使い続け、本人一人ならいざ知らず、船とその乗組員を全員『テレポート』で移動させた反動で、シバは倒れてしまった。
 過剰なエナジー消費による疲労であると判断するのは難しくなかった。残りの道のりはガルシアにおぶってもらい、プロクス村へと歩みを進めた。
 そんな中、シバ以外にも運ばれている者がいた。
 リョウカである。
 彼女は最近になり謎の病に罹ったかのように、様々な症状が体に現れていた。
 食事も満足に食べられず、いつも苦しそうな咳をしていた。ポセイドンとの交戦の際はまだ、並外れた身体能力を発揮していたが、今はもう面影さえも残ってはいない。
 シンの背中の上で今もまた激しい咳をした。
「リョウカ、大丈夫か? もうすぐ横になれる所につくからな……!」
 リョウカは返事をする気力もなかった。ただ力なくシンの背中にもたれるだけだった。
 吹雪は激しく、一向に収まる気配が無かった。吹き付ける強風と雪に、一行はまともに目も開けていられなかった。
 顔に当たる痛いほどの雪に、表情を歪めながら、シンは誰にともなく怒鳴り声を発した。
「まだか、プロクス村は!? このままじゃリョウカが……!」
 背中に感じるリョウカの体温は熱く感じた。ひどい熱を出しているのは測るまでもなく十分に感じ取れた。
 一刻も早く彼女を楽にして上げたいがため出た怒鳴りつけだった。
「落ち着け、シン。そんなに騒いだらお前まで倒れてしまうぞ」
 ロビンがたしなめる。
「これで落ち着いていられるか! 早くしないとリョウカが……!」
 たしなめたところでシンの焦りが消えるはずもなかった。彼を落ち着かせるものは村への到着以外ほか無かった。
「慌てるな、もうすぐだ。俺の記憶が正しければ、あと数分歩けばプロクス村だ」
 ガルシアも吹き付ける雪に顔をしかめながら言った。
「うん? あの光は?」
 ジェラルドが前方を指さした。
「明かりだ、明かりが見えるぞ。きっとあれがプロクス村に違いない!」
 突然、突風が吹き、地吹雪まで発生した。全員は硬質の氷の粒を受け、堅く目を閉じた。
「あいててて……、 こりゃかなわん。先を急ごうぞ、皆!」
 スクレータは目を瞑ったまま叫んだ。
「スクレータの言うとおりだ、先を急ぐぞ! 風に押されないように、足下にも気をつけて、一歩一歩ゆっくり進むんだ!」
 ロビンに従い皆一列を作って、しっかり地面を踏みしめて歩き出した。一人を除いて。
『颯の術・改!』
 シンはエナジーを発動して、リョウカと共に宙に浮かび始めた。
「シン、なにを考えているんだ!? 空は危ない、ロビンの言うとおりにするんだ!」
 ガルシアは叫んだ。
「のこのこ歩いてる暇はねぇ! オレは先に村へ行く」
 またしても突風が吹き、雪の勢いが増した。空中では地面のように踏ん張りが効かず、しかも人をおぶっているせいもあって、シンは地面に落ち掛けた。しかし、体勢を何とか戻し、踏みとどまった。
「くそっ!」
「シン! やはり危険だ。早く下りてこい!」
 ガルシアの制止も聞かず、シンは風に逆らって飛去ってしまった。
 自らの名前を呼ばれているのを余所に、シンは前方の明かりを目指し飛び続けた。
「げほっ、ごほっ……! はあはあ……、兄、様……」
 背中のリョウカは譫言のようにシンを呼んだ。
「リョウカ……」
 首筋にかかる熱い吐息を感じながら、シンは目だけをリョウカへ向けた。
「待っていろ、もう少しだからな……!」
 シンは一心不乱にプロクス村へと飛ぶのだった。
    ※※※
 ロビン達がプロクス村へたどり着いたのは、シンがリョウカを伴って空を飛び去ってから数十分後だった。突風による地吹雪が発生したせいで、思うように歩みを進めることができなかった。
 彼らは今、ようやくプロクス村へ到着し、村の宿にようやく腰を落ち着けているところであった。
 エナジー消費により、気を失ったシバを宿のベッドへ寝かせ、その他のものは、宿のロビーの暖炉に当たって猛吹雪に冷え切った体を暖めていた。
 ロビン達がここへくるより前に、赤い髪をした少女を背負った青年が訪ねて来なかったかと、ガルシアが宿屋の主人に訊いた。
「確かにそんな客は来たが、あれには驚いたよ。なんせあんな薄着で、冷や汗でもかいていたのか、顔の汗がガチガチに凍ってて……。所でお前さん、見覚えがあると思ったら、ガルシアじゃないか?」
 宿屋の主人はガルシアを知っているようだった。それもそのはずである。ハイディア村の嵐により氾濫した川に流されたガルシアを助けこのプロクスの地へ連れてきたのはサテュロスだ。村の中でガルシアを知らぬものはいない。
「覚えていてくれたのか、主人。いかにも俺はガルシアだ」
「やはりそうか! いやはや見違えたぞ。ここを発ったときはとんでもないヒヨッコだったのになぁ……」
 プロクスの民を象徴する蒼白の顔に生えた白い髭を撫でながら、宿屋の主人は約半年前をしみじみ回想した。
「世辞はいらん。それよりカーストとアガティオは村へ戻ってきたのか?」
 訊ねられ、宿屋の主人は回想の先を彼女らにした。
「ああ、奴らか、確か一月前に帰ってきた。だが、すぐに北のマーズ灯台を灯しにいっちまった。それからマーズ灯台は灯るかと思っていたんだが今日まで全く、変わりがない」
 先に向かっていったはずのカースト達が一カ月近く灯台解放に成功していない。彼女らはサテュロスとメナーディに比肩するほどの実力者である。そのような者達がそう易々と魔物にやられているようには思えない。
 しかし、早くに灯台を灯し、世界に錬金術を復活させねばプロクスは真っ先に、灯台諸共暗黒ガイアフォールに巻き込まれ、灯台解放は不可能となる。事は一刻を争っていた。
「これは、もたもたしている時間はないな……」
 ガルシアは顔をしかめた。
「しかし、どうしましょう。シバはすぐにでも回復するでしょうが、リョウカが」
 前回の灯台でも、リョウカは倒れている事を思い出し、メアリィは言った。あの時は風邪が悪化したような状態であったが、今は肺炎でも起こしているかの重傷である。メアリィやピカードのエナジーを尽くしても復活するか分からなかった。
「リョウカは置いていくしかないでしょうね……」
 イワンが苦渋の決断を迫った。
「オレもそうした方がいいと思うが、問題はシンだな……」