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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 15

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 リョウカを残していくとなると、絶対にシンまでも残ると言い出すだろう、ロビンは思った。
 ここから先は一体どうなるか、まるで分かったものではない。強力な敵と出会うやもしれない、できれば戦力を減らしたくはなかった。
 皆一様に同じ気持ちのようだった。戦力を削って先へ進むのか、それとも、どうにかシンを説得し一緒に来てもらうのか。
 一同の視線はロビンに向いている、判断はロビンに任される形になっていた。
「やっぱり、リョウカだけにここへ残ってもらおう。オレが何とかシンを説得して……」
「何を、言うんだ、ロビン……!」
 客室へと続く宿の階段から咳き込んで真紅の髪を揺らしながら、リョウカが現れた。シンも彼女の体を支えながら姿を見せた。
「ロビン、灯台へは私も、ごほっ……ごほっ!」
 リョウカはロビン達の話を聞きつけ、病床を抜け出してきたらしい。シンが止めるのも聞かずベッドを飛び出したらしい。
「リョウカ! まさか、お前まで来るつもりなのか!?」
 ロビンは驚き訊ねた。
「ごほ……、その通りだ。私だけ置いていこうなんて、許さんぞ……」
 言って、リョウカはまた激しい咳をする。
「そんな体で行くというのか!?」
「無謀ですよ!」
 ガルシアやピカードに、いくら無謀だ、不可能だと言われたところでリョウカは意志を曲げようとしなかった。
「リョウカ、今君が来ても足手まといにしかならない、大人しく寝ているんだ」
「いいや、ロビン、私は行くぞ。私は、行かなくては……!」
 言い切れない内にまた咳がリョウカの言葉を阻んだ。げほげほ……、と激しい咳が彼女を襲った。
「リョウカ、ひとまずベッドに戻るんだ!」
 シンが寝るよう指示しても、リョウカはその通りにしようとしない。
ただいつ止むともしれぬ咳に肩を揺らしていた。
「げほ! ゴハッ!」
 リョウカは目を大きく見開き、口に当てていた手をゆっくり放した。
 掌は真っ赤に染められていた。それは指の間を伝ってロビン達にも見えた。
「大変だ、口から血を!」
「早くベッドに運べ!」
「メアリィ、ピカード、回復エナジーを頼む!」
 宿は大騒ぎになった。
    ※※※
 リョウカが喀血した後、メアリィとピカードはエナジーによる治療に当たった。喀血はあの一瞬だけで治まったようだが、それからもひどい咳と高熱が続いた。
 尋常でないリョウカの症状に、誰もが彼女の死を予感してしまった。不安に駆られる一同の中で、なぜかシンだけが慌てた様子を見せていなかった。むしろこうなることを想定していたかのようだった。
 二人の懸命な処置の末、リョウカは落ち着いた。咳も止まり、熱もまだ平熱とはいえないが少し下がった。
 二人は多大なエナジー消費により、リョウカが落ち着いたのを確認するとすぐに眠り込んでしまった。
 その後、ロビン達もすぐに休むことにした。プロクスには到着したばかりで全員に少なからず疲労の色が見えていた。
 リョウカの看病は、やはりシンが買って出た。付きっきりで看病するつもりだった。
 シンとリョウカは二人部屋をあてがわれた。主人の厚意により、凍った川の一部を砕いて汲んだ水と辺りにあった氷の入った桶と、清潔な布も貰うことができた。
 シンは痛いほどの冷たさの氷水に布を浸し、ぎっちりと絞る。それをリョウカの額へとそっと乗せてやった。
 時間はもう真夜中過ぎで、日付もとうに変わっている。プロクス村の中でも起きているのはシンだけではないかと思われた。
 シンとて猛吹雪の中、空を駆ける、などという無茶をした後である。彼にも疲労の色は色濃く現れていた。
 しかし、それでも自分の疲れはどこかへやり、シンはまた氷水の入った桶に手をやる。ふと、手に鋭い痛みが走る。すると氷水に血が広がっていく、見るとどうやら氷で手を切ってしまったらしい。
 シンは舌打ちすると傷口を舐めた。それからやはりする事は桶に浸した布を絞り、リョウカの額に乗せることだった。
 もう何度この作業を繰り返したか知らない。手はもう真っ赤である。しかし、一向にリョウカの熱が下がる気配がない。
 高熱を出しているせいか、リョウカの顔には汗が噴き出ていた。シンは気づき、もう一枚の布で汗を拭ってやる。気づけば汗は顔だけでなく、首、体と汗だくだった。
 これでは気持ち悪いだろう、と思ったシンは、持っている布を湿らせ、小声で詫びた。
「すまん、リョウカ」
 シンはリョウカの服に手をかけると、胸元をはだけさせた。身長の割に大きい二つの膨らみ触れるのはさすがに気が咎めたが、背に腹は代えられず、できるだけそれに触れないように、気をつけながら体の汗も拭いてやった。
 拭き終え、服を直してやると、リョウカの顔が幾分か安らいだように見えた。
「ふう……」
 シンは布を桶に放ると、再び椅子にどかっ、と腰を落とした。すると、こんこん、とドアをノックする音が部屋の静寂を打ち破る。
 宿の主人か、そう思いながらシンは立ち上がり、ドアを開けた。
 そこにいたのは蒼白の顔の主人ではなく、湯気の上がるカップ二つと、サンドイッチの乗った盆を持つロビンだった。
「ロビンか、まだ起きていたのか」
「やあ、リョウカの調子は……、よくないよな。まあ、根詰めてもしょうがない。シン、君も少し休むんだ、夕食も食べなかっただろ? 夜食を持ってきたよ、ちょっといいかな?」
「そうか、わりいな」
 シンはロビンを部屋へ通した。
 ロビンはサイドテーブルに軽食を置くと、自分の分のカップを取り、部屋のもう一脚の椅子を持ってリョウカのベッドの横に置き、座った。
「あれから調子はどうだ?」
 ロビンはカップに口を付け、訊ねた。
「幾分落ち着いてきたみたいだ。熱は少し高いが咳は止まった」
 シンはロビンからカップを受け取り、皿の上のサンドイッチを手に取ると、食べ始めた。サンドイッチは一つしかなく、どうやらロビンは、シンのためだけに持ってきたらしい。
 ロビンはシンの顔を見た。だいぶ疲労が現れていた、このままだと彼までも倒れてしまいそうだった。
「足りないか? だったらもう一つ持ってくるけど……」
「いや、十分だ、ごちそうさん」
 シンは手に付いたサンドイッチのドレッシングを舐めると、ロビンから受け取ったカップを口にした。中身はホットミルクで、飲んだ途端体中が温まる感じがした。
「ホットミルクか、懐かしいな。イズモ村では牛乳が珍しいから、たまに手に入ったら温めて飲んだものだ……」
 シンの家では牛乳が手に入れば、夏でもホットミルクにしていた。そのままでもシンは飲むことができたが、リョウカが牛乳嫌いであった。曰わく匂いが気に入らないそうだった。しかし、温めてホットミルクにする事で甘みが増してリョウカも喜んで飲んでいた。
「なるほど、どおりで背が低いわけだ」
 話を聞いてロビンは苦笑した。
「はは……、言えてるな。けどこいつの場合は背が伸びる栄養のほとんど胸にやったかと思えるくらい、小さいくせに肝心の所は大きいんだ」