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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 15

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第56章 虹の女神の再生、後編


 二体の炎のドラゴンを退治し、その骸となったドラゴン達の上には虹が架かり、小さな光の粒が降りかかっていた。
 地に落ちては弾けて消えていく。その光はまるで、雨上がりに木の葉から零れ落ちる水滴のようだった。
「綺麗だ……」
 ロビンは思わずため息をついてしまった。それほどまでにこの情景は美しく、儚く、そして神秘的であった。
「ん、うう……」
 ふと、耳に届いた呻くような声によって、ロビンは正気に戻った。
「シン!」
 リョウカが放った虹色の炎がもたらす光によって、ロビンとシンは急速な回復を遂げた。
 神経毒をくらい、ほぼ虫の息となっていたシンも虹色の炎の浄化により、体から毒が消え去ったのである。
 シンはまるで、ただの眠りから醒めるように重たげにまぶたを開けた。
「シン、気が付いたか!?」
「ロビン……? オレは一体……」
 シンは上半身を起こすと頭を掻いた。これまで死にかけだったのが嘘のような素振りである。
 しかし、すぐに最後の記憶を取り戻し、ロビンへと迫った。
「そうだ! 思い出したぞ。オレはフレイムドラゴン達にやられそうになって、そこへリョウカが……」
 シンは額に拳をあてがって、記憶を探った。それと同時に目を大きく見開き、彼女を探す。
「リョウカ、リョウカは一体どこに!?」
 くっ、とシンは立ち上がったかと思うとふらふらと膝をついた。
「落ち着け、お前はまだ回復したばかりなんだから……」
 ロビンの言葉などシンには届いてはいなかった。すぐそこで光の粉を振り撒く虹が架かっているというのに、それにすら目をくれなかった。
 やがてシンは鴇色の髪をして倒れ込むリョウカを見つけた。
「リョウカ!」
 シンはリョウカを見つけると、一瞬で彼女の所へ駆け寄った。抱き起こすと何度もシンはリョウカの名前を呼んだ。
「リョウカ! おい、嘘だろ……? 冗談はやめろ!」
 シンは錯乱しきっており、何度もリョウカと呼んでは体を揺さぶった。それでもリョウカは目を閉じたまま応えなかった。
「シン、もう止せ」
 ロビンもリョウカの元へ歩み寄り、シンの腕を掴み、抑えた。放せ、とすぐさま乱暴に振り払われた。
「シン、リョウカは間に合わなかったんだ。そもそも、かなり勝算のない賭だっただろう。こうなる事は予想できたこと……」
「黙れ!」
 シンの怒号にロビンの言葉は止められた。
「シン、気持ちは分かるけど……」
「黙れっつったら、黙ってろ!」
「シン……」
「黙れってのが分かんねえのか!」
 最早シンは聞く耳を持ち合わせてくれなかった。何か言葉を発しようとしても、怒鳴って黙らされてしまう。
「リョウカ、いい加減目を開けろ! お前はこんな所で死んでる場合じゃねえだろ! 目を覚ませ、頼む、覚ましてくれ……」
 シンは横たわるリョウカを抱きしめ、ついには涙を流し始めた。すでにリョウカが冷たくなり始めているのが、体に直接届いていた。
「シン……」
 嗚咽をもらし、涙するシンをロビンは哀れみを込めて見守っていた。
 本当にもう、どうしようもないのか、ロビンは思う。ロビンもまだ諦めきる事はできずにいた。
 何か手段はないか考えてみるが、思いつくはずがなかった。
 ふと、外でどかどかと慌ただしい足音が聞こえてきた。その足音はロビン達のいる灯台の内部へ近付いてきた。
「ロビン、シン、それにリョウカ! 無事か!?」
 プロクス村に残してきた仲間が今追いついたようだった。
「ガルシア、それにみんな……」
「おいこら、てめえら、何たってオレ達を置いて先に行っちまったんだよ!?」
「そうよ、しかもあんなにひどい病気のリョウカまで連れて行くなんて、一体どういうつもりなの?」
 ジェラルドやジャスミンがこう言うのは至極当然の事だった。
 しかし、シンは愚か、ロビンまでもが口を噤んだ。リョウカについては何一つとして喋ることは許されなかった。
「皆さん、こんな所に虹が架かっています。しかもドラゴンが二匹倒れています!」
 灯台内部で、異質なものにいち早く気が付いたのは、イワンであった。
「この虹、何だろう? 近くにいると不思議と力が湧いてくる……」
 プロクスから全員をテレポートで運ぶことによって、エナジーを消費したシバは、空間に架かる不思議な虹からエナジーを受け取った。
「確かにエナジーを感じるのう。しかしこの二匹のドラゴンは一体……」
 死んでいるのか、それとも生きているのか。スクレータが屈んで、地に伏したドラゴン達をのぞき込んだ。
 ドラゴンはやはり死んでいるのか、ぴくりとも動かない。しかし死んでいるにしては、まだ血の巡りが止まったようにも見えない。
「それよりも、ドラゴンを二匹の相手をしたのですから、ロビン達を回復しなくては!」
 ピカードは、怪我はないかと訊ねてきた。
「いや、大丈夫だ。オレは直接相手をしなかったし、あの虹の輝きを浴びたら、体が楽になった」
 ロビンは答えた。
「相手をしなかっただと? ではこのドラゴン達はシン一人で……?」
 ガルシアは訊ねた。すると、ロビンはそれにも首を横に振った。
 では、だれが倒したのか。誰かが訊ねるとロビンは苦言を呈するように視線を仲間達から外した。
「……信じてもらえないかもしれないけど、あいつらはリョウカが一瞬で倒してしまったのさ」
 ロビンは、シンがリョウカを守るため、ロビンに彼女を預けて単身ドラゴンに当たった事を話した。しかし、圧倒的な力の差にシンは深手を負い、文字通り死に瀕した。
 ロビンは何とかシンを蘇生させようと自らの最大のエナジーを充填した。
「その間、一時動けるようになったリョウカが時間稼ぎをしてくれた。けど、無理は利かなかった。何度も発作を起こしては血を吐いて……」
 あの沈痛な風景を思い出し、ロビンは思わず目を固く瞑った。
「そんな状態で、どうして彼女がドラゴン達を倒せたというのだ?」
 ガルシアが訊ねた。
「……みんな、ドラゴン達の上に虹が架かっているのはもう見たよな?

 ロビンの話を聞いていた皆が肯定の意を示した。
「あれは、リョウカが放った虹色に輝く炎によりできたものだ」
「虹色の炎だと!?」
「おいおい、炎は普通赤色だろ」
「あっても青白い炎ですよね……」
 ガルシア達は、ロビンの予測通り、信じられないようだった。
「驚くのも信じられないのもよく分かる。けど、本当のことなんだ」
 そして今、とロビンは哀れみを持った瞳を、部屋の隅でリョウカを抱きしめ、嗚咽に肩を揺らすシンに向けた。
「そして……、リョウカは最後のエナジーを放って……、力尽きた……」
 その時、フレイムドラゴン達の上に架かっていた虹が、消滅した。
「……さ……ま……」
 虹が消えるのと時を同じくして、シンはかすれ、ほとんど言葉になっていないような音を聞いた。
 シンは驚き、抱きしめていたリョウカを体から放した。
「リョウカ!? お前……!」
 リョウカは非常に虚ろな瞳をシンへ向けていた。
 離れたところにいたロビン達にも、シンの様子から何かが起こったのが分かった。
「シン、どうしたんだ!? リョウカは……?」
 ロビンはすぐさま駆け付け、叫び声をあげた。仲間達も後から続いてくる。